今夏の第100回甲子園大会で準優勝した金足農(秋田)の吉田輝星投手(3年)が10日、プロ志望届を提出し、秋田市内の同校で記者会見を行った。「カナノウ・フィーバー」を巻き起こすほどの快投の一方で、「迷い」や「不安」の中で決意を固めたと明かし、日本代表「侍ジャパン」での活躍を将来の目標に掲げた。複数球団による1位指名が予想される25日のドラフト会議に向けては12球団OKの意思を示した。

無数のフラッシュが光る中、学生服姿の吉田は笑顔を見せずに力強く言い切った。「甲子園と国体を通して自分たちの力を発揮して自信につながって決断しました。幼い頃からの夢だった『プロ野球選手になりたい』という思いが一番強かった」。金足農体育館で44社127人の報道陣を前に、初めて自分の口でプロ入りを宣言した。

甲子園大会前に考えた八戸学院大(青森)への進学や、果たしてプロで通用するのかという迷いの中での決断だった。

福井国体終了後に秋田に戻って、今月4日の夜に中泉監督、両親らと進路について話し合った。立ち会った渡辺勉校長(55)によると、吉田は控えめに「プロで力を試したい」と切り出した。対して父正樹さん(43)からは引退後を考え、進学を勧めるような話もあったという。渡辺校長は「吉田が申し訳なさそうにしていたのが気になった」と言い、「気持ちが固まっているなら、自分が大学側に謝ってお願いするから」と背中を押したという。

4日の決断から、プロ志望届提出まで時間が空いたことについて「将来のことも少し考える時間を設けてもらいました」と説明した吉田。「迷いは」と聞かれると「甲子園に出たことで環境が急に変わったので、しっかり冷静に受け止められない部分もあった。少しだけ迷いもあった。客観的にしっかり自分を見た中で、プロの世界でも通用するかということを考えられなかったので、少し不安でした」と言った。続けて「進路を決める中で、自分の思いを尊重してくれる方がたくさんいた」と感謝した。

運命のドラフト会議は2週間後の25日。既に9球団から調査書が届いている。好きな球団は巨人と話したこともあったが、「どのチームに行ってもしっかり努力しようと思っています」と12球団OKの姿勢を表明した。「U18(アジア選手権)でいいピッチングができなかった。もう1回、日の丸を背負って、次はしっかり勝てる投手になりたい」と力強く決意を示した。今夏の甲子園大会の主人公が、さらに羽ばたく時を迎えた。【高橋洋平】