日本高野連は14日、第91回選抜高校野球大会(来年3月23日から12日間、甲子園)の「21世紀枠」の各地区候補9校を発表した。9校すべて公立校で、関東・東京は石岡一(茨城)が選出された。部員は造園科、園芸科、普通科で学び、プロ注目で最速147キロの岩本大地投手(2年)と中山颯太捕手(1年)は「造園科」バッテリーを形成する。出場3校は、一般選考の29校(神宮大会枠を含む)とともに、来年1月25日の選考委員会で決まる。

土の粒1つ1つを丹念にトンボでならし、石岡一ナインは練習を始めた。「普段から土を平らにしていますし、道具を使うので、トンボの扱いにも慣れています」。ともに造園科で学ぶ岩本、中山のバッテリーは笑った。

石岡一の校名からは想像しづらいが、普通科以外に園芸科、造園科を備え、野球部員も41%が農業系学科で学ぶ。週2回、午後に実習授業があり、全員が練習開始にそろわないことも少なくない。そんな環境で明秀学園日立、土浦日大といった強豪を県大会で倒した努力などが評価され、この日の吉報につながった。

最速147キロ、来秋ドラフト候補でもある右腕岩本は「昔から木とか枝を切って遊んでいたので、興味があった」と造園科を志望した。今年は造園技能検定3級に合格。見事な竹垣を作り、表彰されたほどの腕前だ。川井政平監督(44)は「農業系の子は段取りを覚えるのとかが、やっぱり上手です」と話す。造園バッテリーは、配球の組み立てにも抜かりがない。秋季県大会準決勝・藤代戦では延長12回1/3で16奪三振の快投を演じた。

同じ「農業系男子」として、今夏の甲子園準優勝で巻き起こった「金足農旋風」に共感していた。「横浜とかの私立に勝てるのはすごいなと思った」と岩本。来年1月に21世紀枠3校に選ばれれば、阪神園芸の丁寧な整備で知られる甲子園の土を踏む。「もし出場できたら、甲子園で1勝したい」。まずは地に足が着いた謙虚な目標を掲げた。【金子真仁】

◆石岡一 東京から特急で約1時間、茨城・石岡市にある県立高校。1910年(明43)に「新治郡立農学校」として創立し、野球部も4年後に創部した。全日制3科に加えて、定時制も備え、全校で1000人近い生徒が学ぶ。野球部は49人(うち女子マネジャー3人)。春夏通じて甲子園出場はない。大和田俊一校長。