センバツに向け、アマチュア球界にも春がやってきた。8日、高校野球の練習試合が解禁。日刊スポーツが総力をかけて挑む新企画「ドラフト候補生全員!? 会いに行きます」もスタートする。今秋のドラフト会議で1位指名確実の有名選手から、あっと驚く隠し玉まで、140人を超える全国各地のドラフト候補全員を、野球カードで紹介していく。第1回は担当記者の気になる選手を紹介。最注目は最速157キロを誇る「みちのくの新怪物」佐々木朗希投手(大船渡)だ。

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根尾、藤原、小園の高校生野手3人に11球団の1位指名入札が集中した昨年から一転、今年は「高校生投手四天王」が主役になりそうだ。大船渡・佐々木、星稜・奥川、創志学園・西の3右腕に、横浜の左腕・及川。4人ともすでに最速150キロ超をマークし、順調なら、堂々の1位候補だ。

その4人だけでなく、日大三・井上、菰野・岡林、有明・浅田ら、150キロに迫る本格派右腕が全国各地に点在する。今回のリスト外でも複数球団が視察済みの有望投手が多く、各地区春季大会で一気に台頭する可能性を秘める。

大学・社会人投手では明大・森下、JR東日本・太田、JFE西日本・河野がプロの熱視線を集める。東海大・原田、日体大・北山ら首都大学リーグ勢も仕上がりが良く、春の結果次第で上位候補に浮上することもありそうだ。

そんなドラフト候補たちを、日刊スポーツが全力で追いかける。その数、現時点で140人。本紙担当記者たちがプロのスカウトにも負けないフットワークで全国各地を駆け回り、候補生たちに迫る。「全員、紹介できるはずない!」。そんな声も聞こえてきそうな無謀な企画だが、結果はいかに…。ドラフトまで、乞うご期待!

■力感ない157キロ

◆大船渡・佐々木朗希 「夏には、160キロオーバー。甲子園最速を投げて、絶対にプロに行く」。目標設定は明確だ。昨秋の岩手県大会1回戦、外角直球が自己最速を3キロ更新する157キロ。189センチの長身から左足をゆっくり上げて、長い手足を有効活用する。日本ハムのドラフト1位吉田輝星(18=金足農)と違い、投球フォームに力感はない。吉田を荒々しいワシに例えるなら、鶴のような優雅さ。だからこそ球速表示に驚きも大きい。

腰痛や股関節痛を経験するなど体は未完成。体幹トレーニングなどは重視してきたが、負荷をかけて筋力強化したのは昨夏以降。夏に披露したフォークも「肘に負担がかかるし、使わなくても抑えられる」と秋は封印した。気温の上がる今月末までは実戦登板も封印予定。大谷、菊池らに続き、また岩手から伸びしろのある怪物が誕生だ。【鎌田直秀】

●「世代断トツ 大谷クラス」サブロー氏

昨夏の高校野球100回大会で、日刊スポーツ「編成部長」として全国の球児をチェックした前ロッテのサブロー氏(42)も、佐々木を絶賛する。「スピード、スピン量、すべてが素晴らしい。この世代の高校生投手が粒ぞろいだが、その中でも断トツの存在だと思う。将来的には大谷(エンゼルス)クラスの投手になるのでは」。昨秋からの成長をチェックすべく、今春の練習試合も視察予定だ。

「編成部長サブロー」はこの春、さらにパワーアップして登場する。大学、社会人にもフィールドを広げ、「将来、プロで活躍する選手を探す」という視点でドラフト候補たちに迫る。

■担当記者の気になる選手

◆横浜・及川雅貴 最速153キロの直球に、130キロ超の高速スライダー。一方に絞らないと攻略至難な高校NO・1左腕で「スライダーは捨てる」「低めは捨てる」「見逃し三振はOK」と割り切って攻める対戦校も多い。包囲網をどう打ち破っていくか注目だ。【金子真仁】

◆履正社・井上広大 関西の誇る大砲は、巨体が示すパワーだけでなく、変化球を拾ったり逆方向に放り込む技術がある本物の長距離砲。昨年苦しめられた右膝痛が完治し、センバツで大爆発も。大学・社会人ではパナソニックの大砲、片山勢三内野手が成長中。【柏原誠】

◆興南・宮城大弥 九州NO・1左腕。1年夏に甲子園デビューを果たした逸材。昨秋の九州大会で最速145キロをマーク。速球を武器にした奪三振ショーが魅力で、どんな場面でも冷静さを失わず、ピンチを切り抜ける強心臓もある。センバツを逃し、夏にかける。【浦田由紀夫】

◆東大・辻居新平 3拍子そろう主将で最下位脱出のキーマン。昨秋はリーグ11位の打率3割8厘。6盗塁はトップタイで肩も強い。プロ志望は明言していないが、今春次第でドラフト候補に浮上し得る。東大7人目のプロ、野手では初の指名選手なるか、注目だ。【古川真弥】

◆明大・森下暢仁 最速153キロ右腕。豊富な回転量により、打者の手元で力強いのが森下ならではの真っすぐ。きれいな軌道を描くため、打者からすれば思わず手が出るが、捉えられそうで芯を外してしまうキレが魅力。日本球界でもめったにお目にかかれない球筋。【井上真】

◆慶大・柳町達 1年春の開幕戦からリーグ戦全試合に出場する左打ちの好打者。3年時で通算85安打とし、今春の100安打到達が期待される。大先輩高橋由伸(前巨人監督)の通算119安打を超えるか。ミート力にプラス、5本塁打のパンチ力も併せ持っている。【米谷輝昭】

◆トヨタ自動車・嘉陽宗一郎 最速147キロ本格派右腕。一昨年はドラフト候補と注目されるも指名漏れ。阪神2位指名の親友・高橋遥人(亜大)を目前に「自分は2年後」と気丈に振る舞う姿が印象的だった。社会人で力をつけ、今年は上位指名で喜ぶ笑顔が見たい。【保坂淑子】