「高校生投手四天王」の1人、創志学園(岡山)・西純矢投手(2年)が14日、スーパー中学生から大きな刺激を受けた。慶応(神奈川)との練習試合で先発し、5回を1安打9奪三振で無失点。センバツ出場を逃したプロ注目右腕は、高知で夏に向けて投げている。

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高知・春野球場では慶応、高知商、創志学園の3チームによる試合が行われた。ネット裏にはプロ6球団、巨人、ヤクルト、広島、西武、ロッテ、楽天のスカウト陣がこぞってスピードガンを手にマウンドを注目していた。

慶応戦に先発した西は強打慶応を寄せ付けないピッチングを披露。5回を1安打9奪三振の無失点に封じた。最速148キロもそうだが、何よりも「引き出しを多くしたかった」という西の幅の広いピッチングが光った。ブルペンでのストレートがもうひとつだと感じると、初回は変化球でカウントを整える。最後はストレートで詰まらせて3者凡退。

2回は一転してストレートでガンガン攻める。「2回からマウンドにも慣れてきましたから。今日はスピードよりもコントロールを意識して投げました。ボール1個分を出し入れすることを考えて投げました」。西は自分のピッチングを分かりやすく説明したが、そんな右腕にスカウト以上に熱い視線を送るもう1人の逸材がいた。

軟式球で史上初めて中学生として150キロをマークしたスーパー中学生の森木大智(15)だ。森木は既に高知中から高知高への進学を決めており、この日は同校の浜口佳久監督とともに球場に姿を見せていた。森木は「自分もこれから硬式ボールを使うので、どういうピッチャーが自分に合っているのかなと思って。西さんが来られると聞いて、球場に見に来ました。まっすぐの伸びが違いますね。低めのボールが打者の手元でもうひと伸びしています。高めのボールもそうですが、キレが違います」と、じっと西のピッチングから目を離さずに観察を続けた。

そして、試合が終わると自ら西のもとへあいさつに出向き、果敢に質問した。「回転数はどんな風に考えていますか?」と「体重移動について気をつけるところはどこですか?」。

緊張しながらも、質問の内容はピッチングについて日ごろから深く考えていることを感じさせるテーマだった。

2学年下の森木に対して、西は非常に丁寧にアドバイスした。回転数については、ボールを離す時のイメージについて、体重移動は踏み出す左足の出し方と、体の開き方について。体が開いた時の右腕の動きを実践しながら、森木が理解しているか、確認するかのような優しい口調で伝えた。

西は「森木君が150キロ出した映像は見てます。すごいと思いました」と言うと、後ろで聞いていた森木はうれしそうに恥じらいの表情。「(森木は)これから1年生ですし、それに高知だから、岡山でライバルにならなくて良かったです」とまで言った。森木が自分のもとを訪れてくれたことを刺激に変え、森木も西の堂々とした対応に、うれしそうな表情を浮かべていた。

高知中から高知高と森木を6年間指導することになった浜口監督によると、森木は少しずつ硬式ボールへの対応を身に付け始めている。同監督は「シュート回転することがあります。でも、ここまでは順調に来ています。いい時は145キロは出ています。ただ、まだリミッターは外していません。全力はこれからです。どんどん打者に投げていくのが彼の成長につながると考えています」と、具体的な育成へのイメージを説明した。

西を見にきたスカウトの中には、森木の姿を見つけると、すぐに引率する浜口監督にあいさつに出向く球団もあった。森木に対する期待の高さをうかがわせる場面となった。

スーパー高校生とスーパー中学生。森木は4月17日に16歳になる。その大器は来月早々に高校野球へと活躍の場を移す。そして西は最後の夏へ向けて、よりレベルの高いピッチングへ磨きをかけていくことになる。2人の逸材の存在は、近い将来の球界にとってどんな立場になっているか、誰しもが楽しみになるツーショットになった。【井上眞】

◆森木大智(もりき・だいち)2003年(平15)4月17日、高知・土佐市出身。蓮池小3年から高岡第二イーグルスで野球を始め、高知中を経て高知高へ進学予定。昨年8月の全中四国大会で仙台育英秀光中との決勝を制し全国制覇。中学から高校まで指導する高知高の浜口佳久監督は「今は145キロは出ますが、まだ全力ではないです」と言い、現状では急がずに硬式球へ移行中。184センチ82キロ、右投げ右打ち。