平成の最後に163キロの衝撃音が響いた。大船渡(岩手)の佐々木朗希投手(3年)が6日、奈良県内でのU18高校日本代表候補1次合宿の紅白戦に登板。日米12球団44人のスカウトの前で初回、いきなり163キロをマークした。大谷翔平(エンゼルス)が花巻東(岩手)時代に投げた160キロを上回る、国内高校史上最速記録となった。161キロも2球マークし、2回で6者連続三振。「令和の怪物」の誕生だ。

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平成31年4月6日午後2時25分、佐々木が歴史を塗り替えた。日本の高校生では前人未到の163キロ。横浜(神奈川)の左打者・内海貴斗内野手(3年)へのアウトローが、ネット裏の中日のスピードガンに「163」を表示させた。「何となくいけるかなとは思ってました」。表情は、いつもより晴れやかだった。

3月31日、今季初登板で156キロを投げた。その試合後に「160キロ以上を」と今季の目標を掲げ、わずか6日後に達成した。全国の猛者たちが集う日本代表候補合宿。最速157キロ右腕との対戦を皆、心待ちにしていた。「打たれるんじゃないかなと。緊張して変に力んでしまった」。ライバルたちの圧が、佐々木を進化させた。「雲の上の存在」と思っている大谷の高校時代を、少なくともスピードではもう超えた。「(球速を)まだまだ上げていければ」と、170キロを夢見たくなる。

25球中14球が直球。その全てが150キロ超で、3球が160キロを超えた。国際試合対策で使われた木製バットの乾いた音が、2度しか聞こえなかった。内海がフォークをファウルにし、桐蔭学園(神奈川)・森敬斗内野手(3年)が154キロをチップにするのがやっと。センバツ出場の好打者たちが、甲子園未出場の剛腕に手も足も出ない。巨人長谷川スカウト部長は「松坂だってマー君だって(打球が)前に飛んでいた」とただただ驚いた。楽天福田チーム統括本部スカウトは「今まで見た投手の中で最高です」と絶賛した。

もうすぐ平成が終わり、令和が始まる。新元号は「イニシャルが同じR(朗希=ROUKI)なんで。新しいなと思います」とお気に入りの様子だ。まさに、新時代の到来を感じさせる存在になってきた。令和の怪物、佐々木朗希。「これからそれにふさわしい結果を残していければ」と胸を張って襲名を受け止めた。【金子真仁】