日刊スポーツ評論家が阪神をはじめ野球界へ提言し、問題点を掘り下げる「野球塾」の第4回は、山田久志氏の登場。通算284勝を誇る最強サブマリンが「球数制限」のルール化に異を唱えました。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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球数制限は反対だね。高校野球でこれをやる必要性はまったく感じない。日本高野連が投球数の制限を本格的に論議するようだ。これをやりだすとピッチャーも育たないし、試合ができなくなる。

昨年12月、新潟県高野連が独自に投球数制限の導入を決めたことがきっかけらしい。ピッチャーのことがわかっているのか理解に苦しむね。いったいこの球数制限って、だれが言い出したんだい?

プロ野球がメジャーリーグをまねて100球でピッチャーを代えるのが当たり前のようになっている。なんでもメジャーのマネをすればいいってもんじゃない。これがまたアマチュアに“伝染”したってことか。

高校野球のドラマ化は消えてしまうだろ。昨夏は秋田の金足農・吉田輝星が地方大会を1人で投げ抜き、甲子園でも881球を投じた。決勝の大阪桐蔭戦では力尽きたが、農業高、公立の星として野球ファンを感動させてくれた。

横浜・松坂大輔、早実・斎藤佑樹、駒大苫小牧・田中将大らが甲子園を沸かせた。さらにさかのぼると徳島商の板東英二さんも今でいうなら登板過多ということになるだろう。しかし今でもその熱いドラマは球史に輝き語り継がれているではないか。

球数、投球回数などを制限すると、私学と違って公立や地方の高校は複数の投手をそろえることができない。田舎で部員20人ぐらいの高校では、全員にピッチャーの指導をしなくちゃいけないのか? それを言いだすなら部員数も合わせるべきだろ。

わたしは今、ヤングリーグ(一般社団法人全日本少年硬式野球連盟)の会長を務めているが、素晴らしい体格で高校生に見劣りしない中学生も目にする。高校1年から活躍する選手がでてくるのがわかる気がする。ここまでは球数制限すべきだが、その上からはいらない。

球数制限をする理由は「投手の障害予防」のようだ。そんなのはピッチャーのことを知らない専門家が言ってることで、問題はそこじゃない。まったくわかっとらんよ。ピッチャーが勝つために投げて、肩、肘に負担がかかるのは当たり前だろ。

それを練習のし過ぎはあかん、投げすぎはあかんって、そっちに問題をもっていくか。教え方が良ければなんぼ投げても大丈夫。肩、肘にストレスのかからない投げ方を教える、ちゃんと野球を教えることのできる指導者こそ育てるべきで、そこの議論が欠けてはいないか。