球数制限の根拠は何なのか? 日本高野連による第1回「投手の障害予防に関する有識者会議」が26日、都内の明治記念館で行われた。各界から12人の委員が出席し、持論を述べた。

行岡病院副院長で、日本高野連医科学委員会委員である正富隆氏。同氏は、95年の日本臨床スポーツ医学会による提言の作成に携わった。

その提言は次のようなものだ。

「練習日数と時間については、小学生では、週3日以内、1日2時間を超えないこと。中学生・高校生においては、週1日以上の休養をとること。個々の選手の成長、体力と技術に応じた練習量と内容が望ましい」

「全力投球は、小学生では1日50球以内、試合を含めて週200球を超えないこと。中学生では1日70球以内、週350球を超えないこと。高校生では1日100球以内、週500球を超えないこと。なお、1日2試合の登板は禁止すべきである」

ここに出てくる数字は、どうやって定められたのか。正富氏は説明した。

「科学的データを出すのは難しいのですが、徳島県に検診データがありました。それによると、小学生は1日50球、週200球を超えると故障が増えると出ました。中学生はデータがありませんでした。高校は、甲子園大会前の検診アンケートで、70から80%が、1日の投球数が120球以下でした。また、80から90%が1週間で500球以下でした。それぐらいまでにしておかないと(故障して)甲子園に出られなくなるだろう、と。それぐらいなら、甲子園に出られる人であっても、故障はしないだろう、ということです」

93年には、都道府県大会で登板した投手は全員、甲子園で関節機能検査を受けるよう義務づけられた。正富氏によると、それ以降、大きな故障者は出ていない。なお、中学生の球数は、高校生と小学生の中間をとって定められたという。

適切な球数を出す難しさ。それについて、筑波大監督の川村卓氏は「球数制限の効果は確かめられません」と断言した。なぜか? 「どこまで投げたら壊れるか。確かめるため、投手にずっと投げてみろ、とは言えませんよね。倫理的に」。コーチング学の専門家でもある同氏は、こうも話した。

「大学で障害が出るケースのうち95%は、小、中、高のどこかで既にケガをしています。大学で体が大きくなり出力が上がって、取り返しがつかなくなるのです。大学に入ってからケガをするケースは5%だけです。小、中、高が大事なんです。オーバーユースもあるし、1発でやってしまう場合もあります」

効果は確かめられないという球数制限だが「基本的には賛成の立場です。野球界全体に議論が広がるきっかけになると期待しています。野球をやる子どもたちが減っている。このままでは野球は危ない」と訴えた。