オレも岩手球界の怪物候補だ! 花巻東のエース右腕・西舘勇陽(3年)が、1-1の5回から登板して一関一を完全に封じ、3-1の勝利を導いた。1年秋から東北大会に出場し、大船渡の最速163キロ右腕・佐々木朗希(3年)より先に注目を浴びた逸材。球速も昨秋から5キロ更新する自己最速147キロをマークする好内容に、視察したプロ4球団のスカウトを驚かせた。25日から再開する準決勝では専大北上と対戦。東北大会(6月6日開幕、山形)出場にも王手をかけた。

   ◇   ◇   ◇

同点でマウンドに上がった背番号1の西舘が、圧巻の内容で相手打線を封じた。2者連続三振でスタートすると、最後の打者も三振。「ウリャー」。吹き荒れる強風の中でも会場に聞こえる気迫の声。自己最速となる147キロの切れ味ある速球を中心に、5回完全。「一番大事なことはチームを勝たせること。(エンゼルス)大谷翔平さんや(マリナーズ)菊池雄星さんも言っていること。それが格好良くて憧れている。目の前の1戦1戦を勝てる投手になりたい」。2人の先輩投手の意思を継ぐ存在感を示した。

1年秋から「新怪物候補」と称されて期待を背負ってきたが、腰痛の影響もあってフォームを崩し、伸び悩んできた。入れ替わるように佐々木朗希が岩手から全国区に。「同じ県内に日本一の投手がいることは自分にも刺激になるし、練習から意識はしています」。今冬は体の軸形成を重視しながら、上半身のブレをなくし、下半身と連動する新投球フォームを見直した。3月下旬、東海大甲府(山梨)との練習試合で1安打完投したことも自信につながった。この日もスローカーブやフォークを織り交ぜる余裕も芽生えた。

昨春、夏に甲子園を経験したが、昨秋の東北大会は自分の責任で敗れてセンバツ出場を逃した悔しさもある。「3年生になったので、自分のことだけでなく、チームのために」。精神的にも肉体的にも大人になった西舘に、完全復活の兆しが見えた。【鎌田直秀】

◆楽天宮越徹スカウト(41=西舘の好投を視察し)「腕の振りがかなり良くなってきた。夏までにもっと化けそう」

◆DeNA欠端光則スカウト(56=西舘の147キロ直球に)「以前は投球がアバウトな印象もあったが、140キロを超える球をアウトローにしっかり投げていたのが素晴らしい」