衝撃のワールドデビューを確信させた。U18ワールドカップ(W杯)(韓国・機張)に日本代表として出場中の大船渡・佐々木朗希投手(3年)が5日、スーパーラウンド・カナダ戦の試合中盤、度肝を抜くブルペン投球を見せた。

終盤に点差が開かなければ、クローザーで登板予定だった。6日は注目の韓国戦。先発かリリーフか。「ロウキ・ササキ」が世界へのあいさつ代わりの、剛速球を投げ込む時が来た。

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奥川の奪三振ショーをベンチで眺めた佐々木が、6回表に動いた。いつもと明らかに雰囲気が違う。表情、球筋。「記憶にないです」と言うほど、ハイピッチで肩を作った。

ブルペンで「ノブ!」と奥川を呼んだ。相手打者、審判の傾向、マウンドの状況を聞いた。もし奥川の球数が制限ぎりぎりの104球に達し、かつ1点リードの状況ならば、佐々木が抑えとして2回1/3を投げる予定だった。「もう負けられない。2-1で勝ち切るには、朗希だった」と平川投手コーチは明かした。

奥川が103球で7回を投げ抜き、その裏に点差が開いたため、デビューはお預けになった。「いつでも行ける状況です」と意気込む佐々木に用意されたデビューの舞台は、6日の日韓戦だ。打倒日本に燃えるライバルを、佐々木も「前回負けている相手なので」と強く意識する。

スーパーラウンドは1次ラウンド同組との対戦スコアを持ち越すため、日本は2勝1敗。一方、韓国はこの日台湾に敗れ1勝2敗となったが、世界一に向け重要な一戦となることに変わりはない。注目の先発マウンドは誰か。大会期間中、永田監督は当日朝に先発投手へ告げてきた。今大会エース格の左腕宮城が最有力だが、佐々木の剛速球に託す選択肢も浮上する。

ブルペンでは、それだけの球を投げた。圧倒的な球威。佐々木が「8割です」と自己評価した直球を、捕手の水上は「(明石商の)中森の151キロが遅く見えます。160キロくらい出ていたかも」と驚く。「しっかり勝って決勝に一歩でも近づけるように」と決意を示した、最速163キロ右腕。枕言葉の数字さえ、更新してしまいそうな予感が漂う。【金子真仁】

◆スーパーラウンド 1次ラウンドA、B各組を勝ち上がった6チームで争う。1次ラウンド同組の対戦成績を持ち越し、日本は1勝1敗からスタート。別組から進出した3チームと対戦し、計5試合分の成績で順位を決める。上位2チームが決勝へ、3、4位は3位決定戦に進む。

◆佐々木朗希(ささき・ろうき)2001年(平13)11月3日生まれ、岩手県陸前高田市出身。高田小3年から野球を始め、11年の東日本大震災で被災。地元の大船渡へ進学。2年の6月に高校日本代表候補入り。今年4月、U18高校日本代表候補合宿の紅白戦で最速163キロをマークした。7月25日、花巻東との岩手大会決勝の登板を回避し甲子園出場なし。190センチ、86キロ。右投げ右打ち。