新型コロナウイルス感染拡大を受け、第92回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)が無観客で実施される可能性があることが2日、分かった。

主催者である日本高野連と毎日新聞社が検討を続けている。4日に開かれる大会運営委員会で、方向性が示されるとみられる。

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安倍首相の要請を受け、この日から多くの小中高が臨時休校に入った。センバツに出場する32の高校野球部も大きな影響を受けている。ほぼ全ての学校が8日から解禁される練習試合を中止。練習も休止か、行っても縮小を余儀なくされているところが多い。非常事態が続く中、大会開催について、4日の運営委員会での協議結果を待っている。

当初、日本高野連は「他競技の動向も見ながら判断」(2月19日、小倉事務局長)としつつ、通常開催を基本線としていた。だが、政府が同26日に今後2週間の大規模イベント自粛を要請。3月19日開幕のセンバツ大会は自粛期間の後だが、2月27日には休校要請が出され、開催自体が不透明となった。

主催者サイドとしては、選手、観客、大会関係者らの安全確保を絶対条件としながら、同時に、球児たちに甲子園を経験して欲しい思いも強い。大会開催を望む出場校の声が多いのも事実だ。せめぎ合いの中で、可能性を模索。大相撲は春場所を無観客とした。センバツも「無観客開催」が選択肢に浮上。その場合は、自校の生徒、保護者、応援団も入場させない。甲子園から遠方の学校になるほど、主な移動手段となるバスという密閉空間に長時間滞在することになり、集団感染のリスクが高まるためだ。

無観客以外にも、できる限りの手を打つことになりそうだ。大人数の同時接触を避けるため、開会式も取りやめる可能性がある。13日の組み合わせ抽選会についても、通常の主将による抽選ではなく、部長・監督による代理抽選となる可能性がある。感染リスクを少しでも減らすため、最大限、簡素化する方向で進める。

それでも、今後さらに国内感染が拡大すれば、大会中止もあり得る。そうなれば米騒動と戦争をのぞき、春夏を通じて甲子園大会では初めての事態だ。状況を注視しながら慎重に検討を重ね、最終結論を出すこととなりそうだ。

○…センバツ大会のチケットは、既に2月28日からコンビニなどで前売りが始まっている。無観客での開催が決まれば、払い戻しが行われることになりそうだ。

◆過去の高校野球全国大会開催困難 夏の全国大会は2度中止になっている。1918年(大7)の第4回大会は、富山県で起きた米価高騰に伴う暴動(米騒動)が全国に広まった影響で中止。戦局が深刻化した41年は、文部省次官通達によりスポーツの全国的な催しが禁止された。開催された大会で無観客の例はない。阪神大震災(95年1月17日)で開催が危ぶまれたセンバツは、電車や路線バスでの移動、鳴り物応援の禁止など災害復興への理解を求めながら観客を入れて開催。東日本大震災(11年3月11日)直後のセンバツでは「がんばろう!日本」をスローガンに入場行進を一部省略するなどして予定通り同23日に開幕した。地方大会では10年夏の宮崎大会が家畜の伝染病「口蹄(こうてい)疫」発生を受け、準々決勝まで一般観客の入場を制限している。