全国高校野球選手権大会の愛媛大会が行われていた7月下旬、元気な姿で指揮を執った上甲正典監督が2日、急逝した。関係者によると、胆道がんを患い、甲子園大会期間中の8月中旬に症状が悪化した。

 昔かたぎの指導者だった。最速157キロを誇る高校球界屈指の右腕、安楽智大投手が昨春の選抜大会で772球を投げ、秋に右肘を痛めた。米メディアが松山市へ取材に訪れ、批判的に報道すると「高校野球は肉体の限界を気持ちで乗り切るものだ」と突っぱねた。

 和歌山・箕島高で春夏連覇を達成し「尾藤スマイル」で話題を呼んだ故尾藤公氏を慕い、試合中は「上甲スマイル」を見せた。厳しいながらも愛情を注いだ指導で、選手からは慕われた。6月下旬、安楽投手ら3年生部員は67歳の誕生日を祝おうと、新体操部の女子部員と昼休みに練習し、ダンスを披露した。上甲監督は贈られたベストをまとい、満面の笑みで踊りを眺めた。

 上意下達の組織づくりを貫き、管理主義が強かった。その影響だろうか、一部の2年生が1年生にカメムシを食べさせようとする部内いじめ問題が8月上旬に発覚した。来春の選抜大会につながる秋季愛媛大会の出場を辞退することになった。