春季高校野球静岡県大会(草薙球場ほか)が26日に開幕する。昨年、特待制度問題で出場を辞退した三島は、2回戦(午前10時、愛鷹)で藤枝明誠と伊豆中央の勝者と対戦する。エース久保亮輔投手(3年)が秋季大会以降、新球ツーシームを習得し急成長。昨年、出場できなかった悔しさをバネに、県大会上位8校に与えられる「夏のシード権獲得」を目指す。

 昨春、流した涙を無駄にしない。高校野球界に激震が走った特待制度問題。三島は県内では唯一、春季大会を辞退した。号泣したナインを思い出しながら初鹿勇監督(69)は「借りを返すつもりで臨みたい。シード権が獲得できる8強は最低目標。タイトルを1つ奪って東海大会までいく」と、力を込めた。

 チーム浮沈の鍵を握るのが「八木2世」ことエース久保。初鹿監督の山梨県日本航空時代の教え子、日本ハム八木智哉投手にそっくりの独特の変則フォームから繰り出される最速138キロの速球と、冬に習得したストンと落ちるツーシームが武器だ。42年間の監督生活で春夏通算4回甲子園に導き、7人のプロ選手を輩出した初鹿監督をして「これまで見てきた中で1、2番目の投手。高校時代の八木より全然、上」と言わしめる。

 本格的に投手に転向したのは高校入学後。初めて背番号1を背負った秋季県大会では、1回戦で静清工に8回コールドで敗れた。「どうしたら勝てるか」。その日の深夜、寮の風呂につかりながら初鹿監督と2人、話し合った。翌日から2カ月間、200球の投げ込みで新球ツーシームの習得に力を注いだ。習得後は公式戦、練習試合含め8勝1敗、防御率1.58、奪三振率10.76を記録。「精神的にも成長してきたし、安定感が出てきた」と、初鹿監督も目を細める。

 対戦相手は、強打の藤枝明誠か伊豆中央の勝者。「どこが相手でも関係ない。去年の先輩たちの無念を晴らしたい」と、久保は力強く言い切った。【鶴智雄】