<高校野球・春季北海道地区予選大会:駒大苫小牧3-1苫小牧中央>◇13日◇室蘭地区Aブロック2回戦◇苫小牧緑ケ丘

 完全右腕から劇的サヨナラ2ラン!

 駒大苫小牧が9回裏、工藤研太二塁手(3年)のサヨナラ本塁打で苫小牧中央を3-1で下し、初戦を勝ち上がった。昨夏に完全試合を達成した佐藤賢太投手(3年)を土壇場で攻略し、6年連続の春季全道進出に発進した。

 完全右腕の直球を完ぺきにとらえた。9回2死二塁。1番工藤がカウント1-1から振り抜いた。「行ってくれ」。金属音を残した白球は、右翼芝生席でポーンと跳ねた。ガッツポーズで本塁を踏んだヒーローは「夏に向けた春だけど全力で勝ちたかった」と笑顔だった。

 真ん中高めの直球を逃さなかった。公式戦初アーチが自身初のサヨナラ弾。好投手佐藤を攻めあぐねたが、茂木雄介監督(28)は「選手の必死さが工藤に伝わった。単打でも(二塁走者を本塁突入で)勝負させるつもりだったけど、まさかサヨナラとは」と、劇的勝利を振り返った。

 理想の攻撃的1番打者に近づきつつある。小学4年で松井稼頭央(現アストロズ)にあこがれ左打ちに取り組んだ。荷物やゴミまで左手で持ち、打撃で押す手の筋力を強化。「パンチ力はある」(茂木監督)という資質に加え、今オフは1日1000本の振り込みも課した。170センチ、64キロの体から劇的弾を生む下地をつくってきた。

 チームは昨秋の全道2回戦で北照に敗れ、2日間は練習を控え、選手間だけのミーティングに費やした。今春には甲子園V1戦士の佐々木孝介コーチ(22)が就任。「完ぺきにやれていないけど、必死に1球に全力を込めろと言われます」(工藤)。意識改革も着実に進む。

 公式戦初先発だった背番号10の右腕野沢尚(2年)の力投に応えた工藤は「1戦1戦、気持ちを込めて勝ちに行きたい」とチームの思いを代弁した。夏の復権を目指す駒苫の春がスタートした。【村上秀明】