<センバツ高校野球:帝京3-2神戸国際大付>◇26日◇1回戦

 昨夏スーパー1年生として最速148キロデビューした帝京(東京)伊藤拓郎投手(2年)が、甲子園初先発を初完投で飾った。神戸国際大付を最速147キロで5安打9奪三振2失点。レベルアップした決め球スライダーを軸に、5回以降無安打に抑えた。前田三夫監督(60)は甲子園春夏通算50勝に王手をかけた。

 寒風吹く甲子園に差したわずかな日差しを背に、伊藤がピッチを上げる。逆転した直後の8回。2死からエース兼4番の岡本を、この日最速147キロの高め直球で空振り三振に切った。つかんだ流れは渡さない。「暖かくなって体も温まってきた。今日はスピードを意識しないで、球速が出たので、次はもっと出る」と自信を見せた。

 25年ぶりとなる2試合連続雨天中止で、連日スライド先発に備えた。序盤3回で2点を失った。前田監督が「4回で代えようかと思った」と言う中、宝刀スライダーが生命線になった。左打者には、外角のボールゾーンから曲げてカウントを稼ぐ。追い込むと、ひざ元に落として空振りを奪った。130キロ台の高速スライダーと120キロ台を使い分け、内外角を巧みに使った。5回以降は無安打。中1から独学で習得し、壁当てで精度を上げた。帝京・小林助監督(元ロッテ)が、元ヤクルト伊藤智仁の名前を出して評する決め球だ。

 夢はメジャーリーガーと公言する。マリナーズ山本スカウトは「高校生じゃ打てない。今年のドラフトでも1位になる。(高校時代の松坂らを含めて)今まででトップクラス。メジャー志向って聞くし、ぜひアメリカに来てほしい」と早くもラブコールを送った。

 試合前日はバッティングセンターで気分転換した。趣味は散歩。宿舎では五目並べが流行するナインをよそに、近所の武庫川沿いを走り込んだ。体重4814グラムのビッグベイビーとして生まれ、母史美さんは「大きく生まれたんだから、大きく育ってほしい」と願いを込める。次戦は前田監督の甲子園通算50勝がかかる。スーパー2年生になった伊藤が、メモリアル勝利を取りにいく。【前田祐輔】