<高校野球沖縄大会>◇18日◇決勝

 今春のセンバツを制した興南が全国のトップを切って甲子園切符をつかんだ。糸満を9-1で下し、2年連続9度目の代表となった。エース島袋洋奨(ようすけ)投手(3年)は1点を失ったものの、3安打10奪三振で完投。史上6校目となる春夏連覇に挑む。

 優勝を決めた瞬間、興南のエース島袋は笑みを浮かべグラブをポンポンと2度たたくと、そのまま整列に向かった。歓喜の輪も、喜びの抱擁もない。淡々と、少しの笑顔だけで沖縄での高校最後の試合を終わらせた。「目指すのは甲子園の勝利なので。今日はホッとしました」。

 決勝戦はマウンドに集中した。6回にはこの夏初めての本塁打を浴び同点にされたが、気持ちの切り替えは早かった。7、8回と無安打に抑え3安打10三振。プロ注目の147キロ右腕、糸満の宮国椋丞(りょうすけ=3年)に投げ勝った。「相手はデータを取っているのでいつもより変化球を多めに投げました」。ツーシームとスライダーで三振を奪った。

 センバツ優勝から3カ月半。連覇を目指していく中で心が緩んでしまった時期もあった。5月に3年生数人と2年生が野球部の規則を破り我喜屋優監督(60)の逆鱗(げきりん)に触れた。その中には島袋も含まれていた。1週間ボールを持つことを禁止され、ひたすらグラウンドの草刈りや校内の清掃活動に励んだ。「あれがあったおかげで気持ちがリセットされて再出発できました」。夏の大会に入ってからは初戦と2回戦の間の2週間で1週間に800球を投げ込み連投に耐えられる体作りをした。

 優勝を決めた瞬間、島袋の頭をよぎったのは昨夏の甲子園の明豊戦のサヨナラ負けだった。夏の甲子園には悔しさしかない。「連覇は今はまだまだだと思うけど、1つ1つ勝っていきたい」。この勝利は、深紅の優勝旗へのスタートでもある。【前田泰子】