<国体高校野球:聖光学院4-0土岐商>◇26日◇1回戦◇千葉・銚子市野球場

 今夏甲子園8強の聖光学院(福島)が同16強の土岐商(岐阜)に快勝した。主役は右腕エース歳内宏明(2年)。2安打11三振で完封し、ベスト8に導いた。センバツへつながる秋季地区大会まっただ中での国体に、一時は登板しないとの見方もあったが、チーム目標の「全国制覇」へ実力を出し切る。

 歳内の登板は「当たり前」だった。3年生には目標の全国制覇を狙える最後のチャンス。国体敗退3日後(決勝進出の場合は4日後)に行われる秋季福島県大会決勝では、聖光学院の県内55連勝が懸かるが「普通に何のためらいもなく先発は歳内でしたね」と斎藤監督。エースがその期待に、あっさりと応えた。

 土岐商打線に二塁を踏ませぬ圧巻の投球を披露。「変化球を狙われている」と直球を多めに選択した。だが要所で得意のSFF(スプリット・フィンガード・ファストボール)や緩いカーブも織り交ぜる。落ち着き払った歳内に土岐商は、なすすべがなかった。これでこの秋、3試合連続2ケタ奪三振(20、10、11)。

 斎藤監督

 甲子園のような躍動感はないが良い力の抜き方。真っすぐ、スプリットでグイグイ押すのではなくカーブでスポッと抜く。だから130キロ前半の直球でも相手は速く感じ、抑えられる。

 甲子園からさらに進化し続ける歳内。自身でも「甲子園の時よりマウンドで余裕を持って投げている」と分析した。8回に11個目の三振を奪っても、完封勝利を決めても、勝利インタビューでも、笑顔を見せることはない。甲子園と同じスタンス。10月8日からは2年ぶりのセンバツが懸かる東北大会が始まる。お祭りムードも漂う国体だが、力の温存など考えていない。尊敬する3年生との最後の戦いだからでもある。

 前チームの主将、村島大輔遊撃手(3年)は現在、総監督ならぬ「総キャプテン」としてグラウンドに立つ。自身の練習だけでなく後輩指導にも熱を入れる。その姿に歳内ら後輩は胸を打たれる。

 次戦は今夏甲子園8強の新潟明訓。今後の起用法について斎藤監督は「天気予報と日程次第。県の決勝は大事ですから」。それでも歳内は「体力的には問題ない。目標は全国制覇ですから」と頂点を見据えた。【三須一紀】