<センバツ高校野球:北海1-0天理>◇28日◇2回戦

 48年ぶりのセンバツ8強入りだ。2回戦に登場した北海(北海道)が、強豪の天理(奈良)を下し、1963年(昭38)以来のベスト8進出を決めた。2年生右腕の玉熊将一投手が被安打7の粘投を披露。センバツの北海道勢2年生投手では、史上初となる完封勝利だった。チーム全体でも攻守で北海らしさを随所に見せ、昨秋の近畿大会優勝校を撃破した。準々決勝は、31日の第1試合(午前11時開始)で九州国際大付(福岡)と対戦する。

 とことん冷静だった。試合終了の瞬間、北海応援団が陣取った一塁側は大きな歓声と拍手に包まれた。そんな中、玉熊はいつもの通り、淡々とした表情でお辞儀し、右手で帽子を取り、整列に加わった。甲子園2度目の校歌をナインと歌い、引き揚げるとき、やっと表情が緩んだ。6回に殊勲打を放った同じ2年生の松本桃太郎内野手と目が合った。「ナイスバッティング」と声をかけると、松本は「ホーッ」と言葉にならない声を出し、笑った。

 松本とお立ち台に並んだ玉熊は「四球2個は出しましたが今日は、天理を相手に9回完封できて100点です」と胸を張った。序盤は身上のコントロールに微妙な狂いがあった。1回表1死一塁で珍しく暴投。2、3回も走者を背負った。直球、スライダーも高めに浮くことが多く、いつになく苦しい投球だった。それでも冷静沈着に、玉熊はずっとポーカーフェースで粘り強く投げた。

 平川敦監督(39)は序盤の玉熊を見て本調子ではないことを感じていた。あごがいつもより上を向いており「もう少し下を見るように投げたら」と指摘した。修正した後半はいつものキレと制球が戻った。1回戦までチーム打率3割7分2厘の天理打線を翻弄(ほんろう)した。長打は5回の二塁打だけ。最少スコアの重圧も何の、132球の自身初の9回完封だった。

 野球では指導者の教えを忠実に守る。硬式シニア時代に教えられた通り今でも取材時には、質問者に向き直り、目を見て答える。自主練習でも黙々と走り込みを行い、学業もオール5。だが野球を離れると16歳の少年だ。遠征先でよく同部屋になる玉木昂太捕手(3年)は「サッカーが好きでテレビ中継を見ながら、大騒ぎしてますよ」とエースの一面を明かす。

 創志学園戦では10奪三振だったが、この日は奪三振4、内野ゴロ14個。脇を固めた3年生の出番だった。「テンポがいいので守りやすい」と川崎和哉二塁手や森貴弘遊撃手、多間泰介三塁手が軽快にゴロをさばいた。1回に森が一塁へ悪送球した以外は堅い守りで締めた。相手が失策が絡んで決勝点につながったのと好対照の守り勝ちだった。

 2試合連続の1点差勝利で試合巧者ぶりを発揮。平川監督は日ごろから「1対0で勝つゲームをしたい」と口にしていたが、夢舞台で、しかも近畿王者を相手に理想とするゲーム運びだった。玉熊は「一番上を目指して1試合、1試合を戦っていきます」。創部110年目、多くのOBが待望する紫紺の優勝旗を予感させる内容だった。【中尾猛】