<高校野球春季北海道大会:北海5-1駒大岩見沢>◇1日◇1回戦◇札幌円山

 センバツ甲子園で8強の北海が駒大岩見沢を下し、初戦を突破した。エースの玉熊将一投手(2年)が公式戦は甲子園3回戦の九州国際大付(福岡)戦以来、この春は初登板。自己最速タイ141キロの速球とスライダーを駆使し、8回2/3を2安打1失点に抑えた。

 9回2死、完投まであと1アウトのところでマウンドを降り、玉熊の仕事は終わった。ヒグマ打線相手に3回、2安打で1点は許したが、その回を除き許した走者は2、4、9回の四死球による3人だけ。5イニングを3者凡退。ほぼ完璧の投球だった。センバツ甲子園で強豪天理(奈良)を完封するなど、チームを48年ぶりの8強に導いた2年生右腕は62日ぶりの公式戦で、さらに成長した姿を披露した。

 玉熊は「3回を1点で止められたのが良かった。直球が切れていて、中盤からは変化球も良くなりました」と満足そうに振り返った。平川敦監督(40)は「約2カ月ぶりの実戦で駒岩さんに2安打ですから、いいピッチングしたかなと思う」。指揮官は続けて珍しい言葉を口にした。「(玉熊は)これ以上と欲を出さず、このままで行けばいい、十分です」。

 玉熊の成長は札幌円山のバックネット裏で計測していたスピードガンが証明した。この日の直球は最速で141キロ。これまでの自己最速と同じだが、この日は打者付近での減速が2、3キロしかない球が多かった。これまでは4、5キロ落ちるのが普通だった。それだけ打者の手元でグンと伸びる直球を投げていた。さらに背後に球が隠れて出どころが分からないフォームも攻略を難しくさせている。

 この日までの約2カ月間、玉熊は投げられる状態を維持しながら、体力をつけるための走り込み、ウエートトレなど自ら考えて実践してきた。この間、練習試合は3試合。監督から登板日が告げられれば、自ら調整して仕上げる。甲子園3試合、371球で「打たれてもいい、次の打者を抑えるのが大切」ということを学んだ。平川監督は「マウンドの雰囲気が違う。余裕が出てきた」と驚きも交えて見守っている。北海の背番号1は甲子園後も進化し続けている。【中尾猛】