<高校野球南北海道・札幌地区大会:抽選会>◇15日

 北海道に人気漫画「MAJOR」(メジャー)ばりの投手がいた!

 第93回全国高校野球選手権(8月6日開幕、甲子園)の南北海道・札幌地区の組み合わせが決まった。札幌琴似工の野中駿投手(3年)はもともと、右投げだったが小学6年の時、野球肘のため左投げに転向。中学、高校と6年間、あきらめない心と努力の積み重ねの結果、背番号1をつけて最初で最後の夏に挑む。

 野中はワクワクする気持ちを抑えきれなかった。1回戦は30日、対戦相手は札幌西に決まった。右から左投げに替えて6年間、苦しいことやつらいことが多かった。それでも高校最後のマウンドを背番号1で迎えることのできた喜びと「勝ちたい」という思いが胸に満ちてきた。

 ケガで右から左投げに転向し、メジャーまで上り詰めた主人公茂野の野球人生を描いた人気漫画「MAJOR」を地でいく。小学5年ごろ、右肘に痛みが走り、冬に手術。小学6年春になっても痛みは消えなかった。「どうしても野球をやりたくて…。それなら左手があるじゃないか」と決心した。「MAJOR」のことは知っていたが「自分は自分ですから…」とプライドをのぞかせた。

 父・勝利さん(54)は「私に左で投げたいと言ってきたんです。そんなに、簡単にいかないよ」と答えたが、本人は本気だった。中学1年の夏ごろから左投げの練習を始めたが最初、塁間の半分も届かない。週末になると野中が所属する千歳ガッツが練習するグラウンドの隅で親子はキャッチボールを続けた。「1~2カ月で投球のコツはつかむことができた」。公式戦での登板は千歳富丘中3年夏の中体連までかかった。それも中継ぎでの登板だった。鏡でフォームを確認し、ゴムバンドで肩、腕を鍛えた。

 札幌琴似工の鎌田信宏主将兼内野手(3年)は「入学当初、野中とキャッチボールしても何の違和感もありませんでした」と話す。その後、本人から小学生までは右投手だったことを知らされて「本当?

 アニメドラマみたい」と驚いた。

 1年秋に背番号11で公式戦に登板したが、その冬のスキー授業で左膝を負傷。1シーズンを棒に振ったが、リハビリ、筋トレを重ね、最速130キロをマークするまでになった。今年春にエースの座を獲得。札幌地区予選1回戦の北海道文教大明清戦で先発し、公式戦初勝利を挙げた。「野球ができるのが一番、うれしい。全道も出たい」。チームのために全力で左腕を振る。【中尾猛】

 ◆MAJOR(メジャー)

 週刊少年サンデー(小学館)に94~10年まで連載された満田拓也氏による人気野球漫画。全747話、サンデーのコミックスでは最多巻数となる全78巻の作品となった。5歳から始まる主人公茂野吾郎の半生記。子どものころ右肩を痛め、左投げに転向。中学、高校、そして米メジャーで成功するまでが描かれている。「逆境」は乗り越えられるがテーマ。楽天の田中将大投手(22)らプロ野球選手にも愛読者が多い。