花巻東(岩手)には、先輩の西武菊池雄星クラスの“怪物”がいる。191センチ、76キロのエース右腕、大谷翔平は、2年生ながら最速151キロを誇る。1年春から4番打者で通算本塁打は25本と打撃も非凡で、投打に活躍して春の県大会を制した。今夏の甲子園デビューを狙い、14日開幕の岩手大会に挑む。

 大谷が振り抜く右腕は、指先が背番号に達するほど、しなやかに体に巻きつく。4月29日の聖光学院(福島)との練習試合で直球は最速151キロをマーク。過去、2年生投手の公式戦最速は、楽天田中が駒大苫小牧(南北海道)2年の夏、金沢(石川)の釜田佳直(3年)が2年秋に計測した150キロとされる。5月の春季県大会で147キロを出した大谷が、その歴代最速を更新する可能性は十分だ。

 2年前、花巻東は甲子園で春準優勝、夏4強と旋風を巻き起こした。当時、中学3年の大谷は「雄星さんのように甲子園で躍動したい」と同校に入学した。菊池を育てた佐々木洋監督(35)が「僕の監督人生で、県内(出身者)から雄星クラスを発掘するのは最初で最後と思っていたんです。が、すぐ見つかった。少なくとも同等の才能が」と驚く素材。春の県大会にはプロ6球団が集結し「まだ2年の今年でも(ドラフト)1位候補」(中日山本スカウト)などと絶賛された。

 恵まれた才能は両親から受け継いだ。182センチの父徹さん(49)は社会人野球の三菱重工横浜で、強肩を売りに7年間プレーした外野手。170センチの母加代子さん(48)はバドミントンで国体出場の実績がある。

 高校入学時で188センチあった大谷は、日本ハム・ダルビッシュ(196センチ)や楽天岩隈(190センチ)の投球映像を寮で見ながら、理想のフォームを追求。体が柔軟で大きなケガもなく、順調な成長曲線を描いている。目標は「3年までに(高校生最速の)160キロを出し、雄星さんが届かなかった全国制覇を成し遂げる」と大きい。あふれる才能が、まずは今夏の甲子園デビューを狙う。【木下淳】