<全国高校野球選手権:八幡商5-3帝京>◇13日◇2回戦

 八幡商(滋賀)が歴史的な逆転劇を演じた。帝京(東東京)戦で2点差の9回表1死満塁から、5番遠藤和哉外野手(3年)が右翼ポール際に放り込み、ひっくり返した。9回の逆転満塁本塁打は史上初。

 大観衆の視線を力に変えた。3点を追う9回表。敵失で1点を返し、なお1死満塁の好機に遠藤が打席に入った。「すごい歓声が聞こえた。感じ入るように打席に入りました」。8球粘った後の9球目、外角高めの直球を振り抜くと打球はフワフワと右方向へ上がった。4万7000人の観衆が見つめる中、右翼ポール際に吸い込まれた。逆転の満塁アーチとなった。

 大歓声を浴びながら、遠藤は「雰囲気を味わいたかった」と、ゆっくりベースを回った。「みんながチャンスを作ってくれたので次につなげれば、と思っていた。まさかホームランになるとは。最高です」。エース吉中は、ベンチで逆転を見届けると涙が出てきたという。「遠藤まで回せば何とかなると信じていた。また投げさせてもらえるようになったことがうれしい」。強打の帝京を相手に必死で粘り、8回3失点でしのいできた。それが報われた瞬間だった。

 遠藤は高校通算8本塁打だが、滋賀大会での2本を含め今夏だけで3本目。滋賀大会の決勝では勝ち越し2点三塁打を放っており、チーム内では“持っている男”と評されてきた。その評判通り、土壇場の打席内でも冷静だった。決めるまでの8球のうち、変化球でストライクが入ったのは1球だけで「最後は絶対に直球がくる」と読んでいたという。

 山梨学院大付との1回戦では白石が満塁本塁打を放ち、夏の甲子園では史上初の1チームで大会2本の満弾となった。さらに9回の逆転満塁弾は春夏通じて初めて。まさに歴史に残る大逆転といっていい。八幡商にとっても夏の2勝は初めてのこと。8回まで二塁すら踏めていない展開からの逆転勝ちに、池川準人監督(39)が「8回まで予感はなかった。ここぞというところで集中してくれた」と興奮していた。昨夏は滋賀大会で初戦負けだったチームが、甲子園で旋風を巻き起こす。