<全国高校野球選手権:習志野2-1金沢>◇16日◇3回戦

 習志野(千葉)が金沢(石川)との接戦を制し、24年ぶりに8強に進出した。今大会初登板の左腕、在原一稀投手(2年)が8回1/3を7安打1失点。最速153キロの金沢・釜田佳直投手(3年)と対照的に緩い球を効果的に使った。

 試合開始のサイレンとともに投げ込んだ1球が、習志野・在原の投球を物語っていた。99キロのスローカーブが、弧を描きミットに収まる。金沢の1番桜吉は手を出さなかった。この後132球、いわゆる“速球”は1度も投げないまま、金沢の153キロ右腕・釜田に投げ勝った。

 「釜田投手は球が速くて、こういう人が上の世界で通用するんだなと思った。でも点をやらなければ負けません」。16歳左腕は、まだあどけない顔で笑った。実はこの日、8回釜田の打席で自己最速の134キロをマークした。計測された中で最も遅い球は95キロ。常時、釜田に20キロほど劣った。それでもカーブとスライダーで緩急をつけ、8回1/3を1失点に抑えた。

 待ちくたびれた3週間ぶりの出番だった。千葉大会では準決勝、決勝で完投。投球回数ではエース泉沢の2倍以上、4試合21回2/3を任された。「2回戦で同じ2年の大野が好投して、なんで自分じゃないのかな?

 と思いました」。朝先発を告げられると、喜びを爆発させるようにバットでも2安打2得点。8時開始と朝早いが、どこでも眠れるのが自慢。千葉大会から第1試合続きで、連日の3時半起きにも慣れていた。

 背番号8だが「外野手」の自覚はない。「野球は投手が抑えてつくるもの。来年のエースも狙う」と強気だ。序盤には、釜田を意識して捕手のサインに首を振り、力勝負に出た場面もあった。小林徹監督(49)は「お前は本格派じゃない。張り合うな。ポテンシャルが違う」と一刀両断。そこで本来のスタイルに専念できた。「もう目指すのは全国の頂点。次は完投したい」。準々決勝で日大三の強打線を抑えると、優勝した75年以来の4強だ。身の丈に合った投球は、どんな剛腕にも勝る。晴れ舞台で、在原が証明した。【鎌田良美】

 ◆在原一稀(ありはら・かずき)1994年(平6)11月13日、千葉・袖ケ浦市出身。小学校時代は中堅手。蔵波中3年時は投手として県大会4強、県選抜で全国大会優勝。習志野では1年夏からベンチ入り。170センチ、63キロ。左投げ左打ち。