<全国高校野球選手権:日大三5-0習志野>◇18日◇準々決勝

 日大三(西東京)が習志野(千葉)との関東対決を制し、優勝した01年以来10年ぶりの4強に進出した。エースの最速149キロ右腕、吉永健太朗投手(3年)が149球で4安打に抑え、甲子園9試合目の登板にして初完封。今大会4戦全試合完投と、タフネスぶりも見せつけた。小倉全由監督(54)は甲子園通算30勝目とした。

 二塁への当たり損ねの打球が処理されるのを見届け、吉永は軽くグラブをたたいた。5回までは毎回三塁に走者を置いたが、終盤3回は1人も走者を許さず、9つの0を並べた。3度目の甲子園、9試合目の登板にして初めての完封で、公式戦では昨秋東京都大会決勝の国学院久我山戦以来。小倉監督の30勝という節目の勝利を快投で飾り「すごくうれしい」と笑顔を見せた。

 瞬時の判断が、自らを楽にした。「球が走らず力んでいた」という1回、いきなり1死三塁のピンチ。相手3番藤井の2球目だった。投球動作に入ったときに、三塁走者のスタートが視界に入った。「走ってきたら外そう、と頭に入っていたので自然と外せた」と真ん中高めの142キロのボール球でスクイズを防いだ。「(サインなしで外すのは)練習試合ではよくやること。空振りにしたのは初めてですが」。投手としてのセンスと、経験に裏打ちされた冷静さを見せた。

 この日の最速は147キロ。16日の智弁和歌山戦で計測した自己最速には2キロ及ばなかったが、かつて体幹の使い方を参考にした東北・ダルビッシュ有(現日本ハム)らに並ぶ甲子園通算7勝目を挙げた。今大会初戦の日本文理(新潟)戦前、右ひじを若干高く上げるフォームに変えた。西東京大会で安定した成績を残せず、試行錯誤していた。だがヒジを上げると、懸案事項だったバックスイングがスムーズになった。「引っ掛からなくなったし、リリースに力が入る」とトップに至る前にヒジが背中側に入る悪癖が修正できた。

 今日の準決勝で対戦する関西(岡山)は、23日にも新チーム同士で練習試合を予定している相手だ。今のチームとも1年前に岡山で対戦した。13-7で打ち勝ったが、吉永は大量失点し5回で降板。フェリーで徳島を経由し岡山に入った疲労もあった。今大会も14日から中1日ずつで3戦完投と疲労は濃い。決勝まで投げれば自身初の3日連投の可能性もあるが「大舞台でプレーする喜びが、がんばれる源になっている。ここからが勝負。気持ちで投げ切るだけです」。春夏連続4強は通過点。普段の小さな声が、意を決して大きくなった。【清水智彦】

 ◆吉永健太朗(よしなが・けんたろう)1993年(平5)10月13日、東京・八王子市生まれ。小1のころ南平アトムズで野球を始め、3年から投手。日野市の七生中時代は調布シニアに所属、3年時に全国選抜大会、夏の選手権大会とも8強。日大三では2年秋からエース。家族は両親と妹、弟。182センチ、80キロ。右投げ右打ち。