高校ビッグ3の春が幕を開けた。高校野球の今季の対外試合が8日、解禁となった。第84回選抜高校野球(21日開幕、甲子園)に出場する花巻東(岩手)の大谷翔平投手(2年)が、大阪・柏原市内のグラウンドで東大阪大柏原との練習試合に登板した。左座骨の骨折から約7カ月ぶりの実戦登板となったが、最速146キロをマークするなど3回無失点で、打っては2打席連続本塁打。高校ビッグ3の筆頭格が今季初戦で投打に非凡な才能を見せつけた。

 193センチの大谷がマウンドに上がると、ネット裏がざわついた。復活登板を見ようと中日、巨人など6球団のスカウトが集結。左座骨の骨端線損傷を完治させた右腕は、昨夏の甲子園1回戦(対帝京)以来7カ月ぶりの実戦投球で、病み上がりとは思えないパフォーマンスを披露した。

 7回から登板し、3回を無安打無失点。最初の打者を見逃し三振に切った外角低めの直球は「コントロール重視で力は6、7割」と言いながら、この日最速の146キロを計測した。得意のスライダーも解禁し「今年初めて投げた割には曲がった」。最後の打者から空振り三振を奪い、優れた指先の感覚も示した。打者12人、3イニングを内野ゴロ6個と3三振。昨夏甲子園出場の東大阪大柏原を相手に、外野まで球を運ばせなかった。

 打席でも別格だった。登板まで右翼手として出場。5回無死一塁から、今秋ドラフト候補の最速144キロ右腕、福山純平(2年)が投じた直球をたたき、推定130メートルのライナー弾を右中間に突き刺した。7回には中越えに130メートル弾を放ち、高校通算本塁打を35本に伸ばす。昨夏から10キロ増の体重86キロとなり「体が大きくなり飛距離が伸びた実感がある」。視察したスカウト陣を「打者でも1位候補やな」と、うならせた。

 これでも調整途中だ。2月中旬の静岡合宿後、花巻に戻って連日200球を投げ込んだ。1月に投球を再開したばかりで、4日からの関西合宿で疲労も蓄積。「今は落ちている」(佐々木監督)状態だが、146キロを投げた。7カ月ぶりの実戦登板で上半身と下半身のバランスも悪かったが、巨人熊野スカウトは「本来の姿ではなくても非凡。下(下半身)を鍛えればダルビッシュ級になる」。中日米村スカウトも「僕の中では投打に高校NO・1。怪物化しそうだね」と絶賛した。

 昨夏、2年生の甲子園史上最速の150キロを投げた時は骨折していた。佐々木監督は「これから下半身主導のフォームが固まれば、夏をはるかに超える球速が出る」と断言。大谷も「まだまだこれから」とピークを先に見る。今日9日は東洋大姫路(兵庫)戦に先発し、連投を試す。21日のセンバツ開幕へ、最速151キロ右腕が調整のラストスパートに入った。【木下淳】

 ◆大谷翔平(おおたに・しょうへい)1994年(平6)7月5日、岩手県水沢市(現奥州市)生まれ。姉体小2の時、水沢リトルで野球を始める。水沢南中では一関シニアに所属し、3年時に全国大会出場。花巻東では1年春から4番に座る。入学後は外野手で1年秋からエース。昨年は春夏秋の岩手県大会を完全制覇した。50メートル走6秒5。遠投120メートル。家族は両親、兄、姉。右投げ左打ち。193センチ、86キロ。血液型B。

 ◆高校BIG3

 大谷に加え、大阪桐蔭・藤浪晋太郎(2年)と愛工大名電・浜田達郎(2年)のプロ注目の3投手で、いずれもセンバツに出場する。「なにわのダルビッシュ」藤浪は最速150キロ右腕で、身長は同時期のダルビッシュより3センチ高い197センチ。最速147キロ左腕の浜田は昨秋の公式戦12試合のうち11完投というスタミナの持ち主で、明治神宮大会準優勝の原動力となった。

 ◆対外試合

 高校野球では海外交流など例外を除くと、前年12月から3月7日まで対外試合が禁止されている。冬場に練習試合が困難となる寒冷地への配慮が理由。以前は3月の第2土曜が解禁日となっていたが、09年から3月8日に固定された。ただし、センバツ出場校同士は大会終了まで対戦できない。