<センバツ高校野球:九州学院6-0女満別>◇22日◇1回戦

 21世紀枠で初出場した女満別(北海道)は、九州学院(熊本)に敗れた。145キロ右腕の二階堂誠治投手(3年)が昨秋の九州大会準優勝の強力打線に真っ向勝負を挑んだが、初回に4失点を喫した。3回以降は立ち直り10奪三振と北の怪腕の意地を見せた。甲子園での最北勝利はならなかったが、全力疾走、フルスイングと持ち味を発揮した女満別ナインは、すがすがしさを残して夢舞台を去った。

 さわやかで、すがすがしいオホーツクの風が聖地を吹き抜けた。敗戦後のベンチ前、二階堂は上を向き、胸を張った。少し笑みも浮かんだ。横を見ると一緒に戦ったナインも堂々として立っていた。甲子園の土は持ち帰らなかった。「また、来よう」。誰も何も言わなかったが気持ちはひとつ。悔しさは胸にしまい込み、笑顔で引き揚げた。

 自信を持って臨んだ。二階堂は初回先頭打者への初球、140キロ速球を投げ込んだ。相手の九州学院溝脇は俊足巧打のリードオフマン。ファウル2球ですぐに追い込んだ。ここからが違った。際どい球を見極められ、3球ファウルで粘られた。9球目、すっぽ抜けのスライダーで歩かせた。「北海道なら三振を取れるのに、レベル高いなあ」。わずか1個の四球で厳しい戦いを覚悟した。内野安打と四球で2死満塁となり、次打者に初球を右前に運ばれた。さらに右翼線にはじき返され4点を先取された。

 「初回は少し緊張して力みがあったかもしれません」。立ち上がりを攻め込まれ、動揺しても気後れしてもおかしくない展開。それでも3回からは140キロ台の速球に、右打者にはスライダー、左打者には1月に覚えたシンカーで打たせて取った。3回以降は1失点。7回には無死満塁のピンチを無失点で切り抜けた。

 12安打を浴びたが、10三振を奪った。昨秋公式戦の奪三振率10・64、大会1位の力は証明した。145キロ右腕の評判通り、初回にこの日最速の144キロをマーク。9回にも142キロを計測し、150球を投げてもスタミナは衰えなかった。鈴木収監督(43)は「初回の4失点はこれからもっと成長するための糧になったでしょう」と話した。

 学校は全校生徒数132人で、部員は2、3年生合わせて19人。冬場は雪に覆われたグラウンドで紅白戦を積み、固定概念を覆してきた。部員数が少なくても19人全員が仕事を分担し、責任をもって取り組む。スピードにこだわり、勢いを大事にする。この日も攻守交代時にベンチ前で丹治海里外野手(3年)が、時計を左手に経過時間を大声でナインに伝えた。グラウンド外でも大阪入り後は朝食25分、昼食弁当10分、夕食30分と時間への意識を浸透させた。試合時間は1時間39分。大会役員からは女満別に称賛の声も上がった。

 打線は散発6安打に終わり、ナインは二階堂を援護できなかったことを悔しがった。だが、控室でうつむく選手はいなかった。春夏通じての最北勝利はならなくても、収穫いっぱいだった。鈴木監督は「これで終わりではない。心と体を大きく、技を高めていきます」。春から夏に向かう道筋がくっきり見えた。【中尾猛】