<センバツ高校野球:九州学院6-0女満別>◇22日◇1回戦

 「1発屋」から「走り屋」へ。2年前の夏、甲子園でPL学園・清原以来の「1年生4番弾」を放った九州学院(熊本)萩原英之外野手(3年)が、巧打者に変身して帰ってきた。女満別(北海道)との初戦は、3番打者として単打ばかり3安打。「公式戦初」という2盗塁も決めた。高校通算24本塁打のプロ注目打者が生まれ変わって、2回戦は大阪桐蔭の197センチ右腕・藤浪晋太郎(3年)を攻める。

 記念すべき「お初」は、初回に決めた。萩原は1死二塁から遊撃内野安打で出塁。続く4番太田の2球目、ベンチのサインに応え、勢いよくスタートを切り、鮮やかに二盗を決めた。これがなんと公式戦初盗塁。50メートル6秒1と足は速いが、機会がなかっただけ。甲子園でマークするあたりが「もっている」。

 「盗塁は基本しないんですが、気持ちが乗ってたんですかね。攻めて走ってやろうという気持ちです」。

 主将のこの気持ちにチームは勢いづく。2死から四球に連打で一挙4点。「最初は固かったが、2死からの4点が大きかった」と坂井宏安監督(54)が振り返った勝負のポイント。初出場女満別の足をすくい、主導権をつかんだ。「走る」萩原が流れをつくった。

 7回にも2盗塁目を決めた。そして適時打を含め、単打ばかり3安打。「3安打でも形はよくなかった。がむしゃらにやった結果。チームのつなぐ意識としてはよかった」。打線をつなぐ3番として、萩原は仕事をして機能した。

 2年前の夏。鹿児島実との3回戦でPL学園・清原以来の「1年生4番弾」を放つなど、華々しい甲子園デビューを飾った。4試合で17打数8安打の打率4割7分1厘。しかし、2季連続のセンバツで甲子園の魔物に魅入られた。4番が7打数無安打と打てず、チームは2回戦で敗退した。責任を背負った萩原は打撃不振。夏は甲子園切符を逃した。

 秋は1番打者に配置転換、守りも内野から外野にシフトされた。「1年から4番の重みを背負い、野球を楽しめなくなっていた」という坂井監督の親心からの再生策。「1番を打って、積極性の大事さが分かった」。打ちたい、結果を出したいあせりから、失っていた積極性。「1人の結果にこだわっていたが、主将になってがむしゃらにいけるようになった」。きた球をただ振る。単純な考えが、3安打につながった。

 2回戦は197センチ右腕の藤浪が立ちはだかる。坂井監督が「横綱と十両」と謙遜した大阪桐蔭。そんな恐怖も楽しむ。「勝てばまた、レベルの高いチームと試合できる。それが甲子園のよさと思ってますから。試合前もみんなで『絶対勝とう』と言ってました」。1年かけて「楽しむ」気持ちを取り戻した。1発だけじゃなく、打って走れる魅力も兼ね備えた萩原が引っ張り、横綱を倒す。【実藤健一】

 ◆萩原英之(はぎわら・ひでゆき)1994年(平6)6月27日、熊本市生まれ。小3で野球を始め、九州学院中3年のとき投手、遊撃手を兼任し全国大会出場。高校入学直後から4番に座り、1年夏の甲子園3回戦の鹿児島実戦で本塁打を放った。昨春センバツでも4番を打つが、7打数無安打で2回戦敗退。177センチ、80キロ。右投げ左打ち。