<センバツ高校野球:関東一4-2横浜>◇1日◇準々決勝

 甲子園を知り尽くした横浜(神奈川)・渡辺元智監督(67)ですら、熱くならずにいられなかった。2点ビハインドから1点返した直後の5回1死一、三塁。高橋のスクイズで三塁走者の尾関が悠々と生還した。だが歓喜にわく横浜ベンチの前で、空気は一変。相手捕手のアピールで本塁空過が認められ、尾関はアウトとなった。

 幻の同点スクイズに、渡辺監督も審判へ猛反論。抗議権がないと注意され「興奮して自分を失ってしまった。みっともない」と謝罪する事態に発展した。しかし、これで反撃の流れを失ったのは明らか。尾関は「確かに踏んだと思った。目で見たし、スパイクの歯が土に入る感触もなかった。何が何だか分からない」と目を真っ赤に腫らした。

 不運は他にもあった。4回にはエース柳がけん制で一塁走者を刺したかに見えたが判定はボーク。直後の被弾で2点を失った。柳は今大会で2度けん制死を奪っており「踏み出していないと言われた。自分では踏み出してから投げたつもり」と判定に泣いた。

 それでも、名門の意地は見せた。尾関は7回に同点の犠飛。開幕前に右目の眼窩(がんか)底骨折で手術、入院したが、影響はみじんも感じさせなかった。9回最後の打者も尾関。敗れはしたが、主将として開幕前からこう言っていた。「夏にも出て、神奈川県勢初の4季連続甲子園が目標なんです」。通算50勝の名将と目指す全国制覇は、最後の夏に取っておく。【鎌田良美】

 ▼高校野球特別規則

 審判員に対して規則適用上の疑義を申し出る場合

 審判員に対して規則適用上の疑義を申し出る場合は、主将、伝令または当該選手に限る。