<高校野球福岡大会:希望が丘8-7自由ケ丘>◇11日◇2回戦◇的場池

 プロが注目する逸材が早くも姿を消した。自由ケ丘はサヨナラ負けで初戦敗退。「新庄2世」と注目を集めた武田健吾外野手(3年)は5打数無安打に終わった。甲子園の夢をかなえられないまま最後の夏の幕を閉じた。

 あふれ出る涙をタオルでぬぐっても、どうしても止めることができなかった。秋、春の県大会を連覇したチームがまさかの初戦敗退。自由ケ丘の武田にとって、あまりにも早い夏の終わりだった。「後悔しか残らないです」と言うのがやっとだった。

 どしゃ降りの中で始まった1回表、無死満塁で打席に立った。三塁へのゴロが相手の野選となり先制点をあげたが「見せ場」はそれだけだった。雨で55分中断した後の2回以降は4打数無安打。同点に追いつかれて延長に突入し、11回には2死三塁の好機に三塁ゴロに倒れた。そしてその裏、味方の守備の乱れからサヨナラ負け。高校最後の打席はスライダーをひっかけ「自分が打ったらここで決まる、と思って力みが出てしまった。後悔しかないです」と悔いだけを残した。末次秀樹監督(54)は「チーム全体が武田におんぶに抱っこの気持ちになってしまったかもしれない」と気づかった。

 走攻守そろった大型の右打者。高校通算23発でパワーとうまさを備えた打撃と、センス抜群の守備は「高校時代の新庄を思い出させる」とプロのスカウトをうならせた。春の県大会では3試合連続本塁打を放ちその名を上げた。この日は6球団がネット裏で注目。昨年ドラフト1、2位を九州から獲得したDeNAの吉田編成・スカウト部長は「体も大きいし、いいスイングをしているね」と潜在能力の高さに注目した。

 不完全燃焼で終わった高校時代の悔しさはプロで晴らすつもりだ。「卒業したらプロへ行きたいです」と武田はきっぱり宣言。プロで活躍するために、この日流した涙を無駄にはしない。【前田泰子】

 ◆武田健吾(たけだ・けんご)1994年(平6)4月18日、福岡県筑後市生まれ。羽犬塚小1年のとき野球を始め、羽犬塚中では「三潴ファイターズ」で投手兼外野手。中3のとき「AA世界選手権」で日本代表入りした。高校では1年からレギュラーで4番。183センチ、73キロ。右投げ右打ち。