＜高校野球神奈川大会：日大藤沢３－２武相＞◇１２日◇１回戦◇保土ケ谷・神奈川新聞スタジアム

　えっ、インフィールドフライなのにサヨナラ勝ち？

　武相－日大藤沢戦は、珍しい形で決着した。２－２で迎えた９回裏、日大藤沢は１死満塁と絶好のサヨナラ機。１番・伊藤修太外野手（３年）は遊撃へのインフィールドフライに倒れたが、武相ナインがひと呼吸置いたスキに、三塁走者の斎藤歩内野手（１年）がスルスルと走りだし、サヨナラのホームを踏んだ。ともに甲子園出場経験のある強豪同士の好カードは、意外な幕切れとなった。

　すぐには受け入れられなかった。武相のエース板野拓耶投手(３年）はサヨナラの瞬間、マウンドでボールを持っていた。何が起こったか理解できなかったか、と聞かれると「はい」とひと言。「何も考えられなかった。気持ちの面で負けました」と大粒の涙を流した。

　選手たちは抗議したが、インプレーなので審判の判定は変わらない。整列時になっても納得いかない選手もいて、周囲が必死に止めるほどだった。桑元孝雄監督（４２）は「三塁手の葛西はタイムという言葉を口にしたそうだが、伝わっていなかった」と説明した。

　微妙な判定にも泣かされていた。６回の攻撃、無死一塁で３番・村尾信義外野手（２年）の打球は左翼へ。相手左翼手はワンバウンドで捕球したようにも見えたが、判定はアウト、一塁走者も戻れず併殺を喫した。同監督も「選手たちを迷わせている。ジャッジは変えられないのだから、技術を含めどう改善していくのか尋ねたい」と審判団に思わず注文をつけた。

　「勝ちにこだわった日大藤沢さんに隙がなかった。しょうがない」。締めくくりの言葉とは裏腹に、悔いの残る敗戦となった。