<高校野球神奈川大会:横浜8-0上矢部>◇14日◇2回戦◇保土ケ谷・神奈川新聞スタジアム

 ハマの“怪物”がベールを脱いだ。横浜の4番・高浜祐仁(ゆうと)内野手(1年)が、神奈川大会初戦の初打席で3ランを放った。1死一、二塁で内角の直球を振り抜くと、打球は左翼席の場外に消えた。横浜の1年生4番打者は珍しく、92年の紀田(元西武)07年の筒香(DeNA)ら数えるほど。あどけなさの残る181センチ、81キロの長距離砲は、神奈川初の4季連続の甲子園を狙う名門を勢いづけた。

 鋭い金属音が響いた。1回1死一、二塁の好機で、横浜の4番・高浜が、ゆっくりと右打席に入った。初球のボール球を見送り、続く内角の直球を鋭く振り抜いた。球場全体がどよめく中、打球は95メートルの左翼フェンスを大きく越え、場外へと消えた。「打った瞬間、入ったと思いました。場外弾は初めてです。うれしかったですね」。鮮烈な夏の初打席での1年生の1発に、監督歴44年の渡辺元智監督(67)も「記憶にない」と目を丸くした。

 パワフルな打撃で中学時代に積み重ねた本塁打は30本。当時から注目していた小倉清一郎コーチ(68)は「入学前から4番と決めていた。プロに行かせないといけない素材」とほれ込んでいる。同じく1年から4番を務めた、高校通算69発のDeNA筒香と比較しても「現段階では高浜の方が上。インコースへの対応力がある」と評価する。この日も、その内角球を捉えての1発。渡辺監督は「うまく対応した。非凡なものを持っており、信頼感がある」とうなった。

 5月の関東大会から4番を任され、名門に欠かせない戦力となっている。小倉コーチは「1年生にはかわいそうな立場だが、勝つには高浜の力が必要」と言う。もっとも本人は「プレッシャーはありますが、逆に燃えています。プラスになっています」と動じていない。「打点を多く稼ぐ4番になりたい。神奈川県の本塁打記録(5本)を抜きたいですね」と頼もしい。

 動画サイトでプロの打撃フォームをチェックするなど、研究熱心な一面もある。目標の選手は07年高校生ドラフト阪神1巡目の兄卓也(ロッテ)ではなく、「バットを内から出すイメージ」という豪快な打撃の印象が強い日本ハム中田だ。

 16歳の誕生日を迎える8月8日は、夏の甲子園大会の開幕日。「それは気付いていますよ」という高浜の笑顔には、高校1年生らしいあどけなさがあった。【柏山自夢】

 ◆高浜祐仁(たかはま・ゆうと)1996年(平8)8月8日、佐賀市生まれ。小2で野球を始める。福岡・金田中では「飯塚ライジングスターボーイズ」に所属し硬式野球に取り組む。兄卓也(ロッテ内野手)の活躍を見て横浜に入学した。入学後、遊撃から三塁にコンバートされた。入学時に88キロあった体重は練習で絞られ、現在は81キロ。右投げ右打ち。家族は両親と姉、兄。