<高校野球東東京大会:日大一10-0開成>◇17日◇4回戦◇神宮第2

 「8時半の男」元巨人の故宮田征典さんの孫、日大一の宮田孝将(3年)が、外野手登録ながら3試合連続完封をやってのけた。東東京大会・開成戦に先発し、5回1安打無失点でコールド勝ちした。宮田は今大会23イニング連続無失点と快進撃を続けている。

 宮田は小峯将乃捕手(3年)のサインに1度も首を振らずに、小気味よく打者16人を41球で料理した。1、2回戦はスライダーなどの変化球で相手打線を幻惑した。裏をかいたかのように、この日は変化球はカーブの1球しか投げずに、高偏差値の開成打線に直球勝負を挑み手玉に取った。

 「うれしいです。やっちゃったなという感じ」。チームとしても3試合連続完封中だったこともあり「(次に戦う相手に)プレッシャーをかける意味でも完封を狙っていました」と声を弾ませた。渡辺尚樹監督(27)は「マウンド上で堂々と投げている。自信を持って自分の投球ができている」と絶賛した。

 直球のスピードは130キロにも満たない。絶対的な変化球があるわけでもないし、抜群の制球力を誇るわけでもない。それでも、公式戦初登板の1回戦から通算23イニング、1点も取られていない。東大卒の開成・青木秀憲監督(41)は「150キロの速球があるわけでも、制球が抜群なわけでもないのに、ここまで完封して勝ち上がるのはすごいこと」と、宮田の不思議な力に驚いていた。

 体を前傾させて横手から、または体を起こして上手から変幻自在に投げ込む。体を倒す角度で自然に腕の出る角度が変わる投法は、自分で考えて春先から練習を積んで完成させたものだが、名投手コーチでもあった祖父の天国からの贈り物だったのかもしれない。

 征典さんの長女である母の知美さん(47)は、息子の活躍を伝える新聞を全紙購入し、祖父の写真の前に飾っている。今大会は宮田の快進撃で、遺影の前は新聞だらけだという。「母が全部の新聞を買ってきちゃうんですよ」と苦笑いした宮田。次の5回戦はいよいよ、昨夏4強の二松学舎大付戦だ。「今までと違って打たれるだろうけど、大差をつけられないようにして、打撃のリズムをつくって勝っていきたい」と決意を新たにしていた。【茶木哲】

 ◆宮田征典(みやた・ゆきのり)

 1939年(昭14)11月4日、群馬県前橋市生まれ。前橋高から日大を経て、62年に巨人入団。主にリリーフ投手として活躍した。特に65年は20勝(5敗)をマークし、9連覇の最初の優勝に貢献。登板時の時刻が午後8時半前後だったことから「8時半の男」の異名を取った。通算成績は在籍8年で45勝30敗、防御率2・63。引退後は巨人などのコーチを歴任。06年に逝去。