<高校野球熊本大会:済々黌1-0九州学院>◇24日◇準決勝◇藤崎台

 細身の左腕が、九州学院の強力打線をねじ伏せた。熊本大会準決勝は創立130周年の伝統校、済々黌がセンバツ出場の九州学院を破り、決勝進出を決めた。2年生の左腕エース大竹耕太郎が5安打完封。8回1死満塁の大ピンチで九州学院の主砲・萩原英之(3年)をストレートで三邪飛に打ち取る力勝負を展開。今日25日、18年ぶりの甲子園をかけて必由館との決勝に臨む。

 細く、長い腕を思い切り振った。魂がこもった内角直球に萩原の打球は完全に詰まった三邪飛。8回1死満塁で打席に主砲。最大のピンチを迎えても、大竹は表情も変えなかった。「ああいうピンチは何度も経験してるんで」とさらり。度胸満点の投球が、プロも注目の好素材をそろえた強力打線を抑え込んだ。

 「昨年の秋に負けてから九学を想定して配球とか考えてきましたから」。昨秋の熊本大会3回戦で九州学院に0-2で負けた。「九学に勝たないと、甲子園には行けない」。小学校からバッテリーを組む西口貴大捕手(3年)と九学打線を研究。同時に大竹は体幹強化に取り組んだ。体重は61キロから68キロに増え、フォームが安定し、制球力をつけた。約1年かけて「打倒九学」のシナリオを描いた。

 「すごい打線ですけど、各打者で結構苦手なコースがあって、性格にも特徴があるんですよ」と西口は言う。この日最速の137キロ真っすぐをコースに投げ分け、90キロ台のスローボールをシュート系の変化をさせて織り交ぜた。満塁での萩原の打席も西口は「スライダーに張ってたようなんで」と裏をかいての直球勝負。相手を読み切ったバッテリーの完全勝利だった。

 創立130周年。伝統のスクールカラー、黄色に染まった三塁側スタンドが激しく揺れた。「勝因は運じゃないですかね。運しかないです」。池田満頼監督(39)がつぶやく。18年ぶりの甲子園に王手。2年生エースが、古豪の前に立ちふさがっていた重い扉をこじ開ける。【実藤健一】

 ◆大竹耕太郎(おおたけ・こうたろう)1995年(平7)6月29日、熊本市生まれ。小4で野球を始めてから投手。託麻中では3年時に全国大会を経験。済々黌では1年夏から背番号10でベンチ入り。秋からエースナンバー。自己最速は138キロ。181センチ、68キロ。家族は両親と姉。好きなプロ球団はソフトバンク。選手は巨人の杉内。左投げ左打ち。