<高校野球神奈川大会:桐光学園4-3横浜>◇25日◇準々決勝◇横浜スタジアム

 ついに壁を破った。桐光学園のエース松井裕樹投手(2年)が、得意のスライダーで、4季連続の甲子園を狙う横浜を倒した。松井はスライダーを武器に4者連続三振の立ち上がりを見せ、1点差に迫られた9回表1死三塁ではスライダーでスクイズを阻止した。3安打11奪三振で3失点完投。10年秋から昨秋まで4連敗を喫していた因縁の相手に競り勝ち、2年連続の4強入りを決めた。

 最後の打者を中飛に打ち取ると、松井はその場で跳びはねた。昨夏の決勝でサヨナラ負けを喫してから1年。10年秋から続く横浜戦の4連敗も止めた。「横浜を相手にするつもりでずっと練習してきました。うれしいです」。2年生エースは笑顔を見せた。

 野呂雅之監督(51)が「並大抵ではない」と評する、落ちるスライダーを武器にする。女房役の宇川一光捕手(3年)は、昨年と比べ「制球力がよくなった」と証言する通り、磨きをかけて夏に臨んだ。絶対の自信を持っていた。

 だからこそ絶体絶命のピンチにもスライダーを選んだ。3点リードして迎えた9回表の守り。四球を契機に1点差に迫られ、なおも1死三塁のピンチを迎えた。カウント1ボール2ストライク。暴投でも同点の場面だが、迷いはない。「三振を狙いにいきました。宇川さんが止めてくれると思ったので、怖くはありませんでした」。スクイズを狙った横浜・尾関一旗捕手(3年)を、ワンバウンドのボール球でスリーバント失敗に仕留めた。

 磨いてきたのはスライダーだけではない。松井は「昨年は3年の先輩についていって、ただボールを投げるだけでした。今は周りを見て試合をコントロール出来ていると思います」と自分の成長を語る。この日も3回に先制アーチを許した。昨年までなら崩れても不思議はない。だが「(前の回に)打者として凡退した後でマウンドに上がり、簡単に投げすぎた」と原因を分析。引きずることなく後続を3人で抑えた。この直後、同点に追いついた。失点後に踏ん張ったエースが、接戦を呼んだ。

 桐光学園が夏、横浜に勝つのは84年以来28年ぶりのこと。野呂監督は「大きな壁を1つ越えてくれた。これを財産にしてほしい」と目を細めた。5年ぶりの甲子園まであと2つ。「目の前の試合を1つ1つ頑張りたいです」と松井に心の隙はない。【柏山自夢】