<高校野球静岡大会:常葉学園橘4-3静岡商>◇27日◇決勝◇愛鷹球場

 常葉学園橘が静岡商に競り勝ち、2年ぶり3度目の優勝を果たした。同点の7回に無死一、二塁から主将の3番城戸健太朗捕手(3年)が右前に勝ち越し打を放つなど4単打を集めて3得点。エース宮崎悟投手(3年)は8回に1点差に追い上げられたが、気迫の117球で逃げ切った。ノーシードからの優勝は09年の同校以来3年ぶり。

 9回、簡単に2死を奪った常葉橘は木村聡司遊撃手(1年)の失策で走者を許した。城戸がマウンドの宮崎の元へ歩み寄る。「お前があんなところに打たせたから悪い」。右腕の闘志をたきつけると、エースは相手4番をどん詰まりの中飛に仕留めた。抱き合うバッテリーを中心に歓喜の輪が広がった。新チームになって2季連続で敗れていた静岡商に雪辱した。2年ぶりの甲子園切符をつかんだ。城戸は「やってきたものを出せて達成感があります」。宮崎と共に1年の時に出場した聖地に再び立つ。

 強気な姿勢が活路を開いた。同点の7回、先頭の1番木村が相手失策で出塁した。3回までは送りバントを選択していた場面だが、2番志水啓修(ひろのぶ)中堅手(3年)への指示は「打て」。2球目を左前へ流し一、二塁とした。打席には城戸。「それまでチャンスをつぶしていて、強い自分を出す気持ちで立った」。序盤はタイミングが合っていなかった静岡商・中本聖エリヤ投手(3年)の直球をしぶとく右前に運ぶ勝ち越し打を放った。

 その後1死一、三塁となると、二盗してから5番増田恭也右翼手(3年)の適時打で中本をKO。国松歩(あと)投手(1年)に代わっても、一、三塁から二盗して6番佐々木貴士一塁手(2年)が適時打を放った。1点を争う大一番で積極走塁も絡める強攻策から3点を挙げた。

 「送ったらワンアウトをあげてしまう」。城戸が意図を明かした。その視線の先には甲子園がある。初出場の09年は2勝しベスト16。翌10年は初戦で敗退した。その時から全国ベスト8を目指してきたチームは、1球にこだわり一振りで仕留めるのを理想とした。時にはバントではなく、強攻策でつなぐ自在性がなければ、全国の上位には進めない。その覚悟と練習で培った自信がつなぎの野球を上回る「超スモールベースボール」として開花した。

 「甲子園が本当の戦い。そのために練習してきた」と城戸。同校として3年ぶりの勝利を狙うのはもちろんだが、県としても昨春のセンバツで1回戦を突破した静清以来の県外大会勝利へ期待がかかる。常葉橘が決勝で見せた可能性。負の流れをバットで断ち切るべく、甲子園へ向かう。【石原正二郎】

 ◆常葉学園橘

 1963年(昭38)に橘高等学校として創立された私立校。78年から現校名、97年から男女共学となる。生徒数909人(女子458人)。野球部は学校創立と同時に創部し部員数40人。09、10年夏に甲子園出場。主なOBは庄司隼人(広島)関谷正徳(元レーサー)。所在地は静岡市葵区瀬名2の1の1。吉村耕司校長。◆Vへの足跡◆1回戦7-0吉田2回戦5-2東海大翔洋3回戦8-0沼津東4回戦5-0伊東商準々決勝3-1静岡市立準決勝1-0聖隷クリストファー決勝4-3静岡商