<全国高校野球選手権:龍谷大平安9-8旭川工>◇12日◇1回戦

 龍谷大平安(京都)がサヨナラ勝ちで、現校名での甲子園1勝を挙げた。今秋ドラフト上位候補の4番高橋大樹外野手(3年)が4安打で好機をつくり、2点を追う9回2死走者なしから同点。延長11回1死満塁から嶋田侑人内野手(2年)が右越えサヨナラ打を放った。夏は9年ぶりの白星。京都勢の甲子園春夏連敗も6で止めた。

 背走する右翼手の頭上を越え、サヨナラの打球が芝生に弾んだ。龍谷大平安ベンチから真っ先に本塁に走り寄ったのは高橋だ。「甲子園でまだ(試合)やれるぞぉ!」。跳びはねながら整列に加わった。

 この日の朝、真っ先に出会った嶋田が白星を運んでくれた。午前4時起床。寝坊が怖くて嶋田に「起こしに来て」と頼んだ。律義に15分早起きし、ねぼけまなこの自分をゆすってくれた後輩が、延長11回1死満塁でサヨナラ打。「高橋さんには『甲子園では足がゾクゾクする』と言われてました」と明かした嶋田が、高橋をしびれさせた。

 ただ、劇的な展開を導いたのは4番の4安打だ。6回無死三塁では同点打。2点を追った9回2死一塁から4本目の安打で好機を広げ、有田の同点打を呼んだ。「センスは今年の野手のトップクラス」(ソフトバンク永山スカウト部長)とプロが高く評価する打力で、甲子園では昨夏から10打数7安打2打点。1月4日に手術を受けた右肩は万全ではないが、7回の本塁返球では「アウトに出来なかったけど、初めていい球が行った」と手応えも得た。

 高校最後の夏。「今までは負けて泣いてばかり。今年は泣かない」と誓っていたが、9回は打席からベンチまで泣き通し。「まだここでやりたい、と思ったら…」。泣き顔は試合後、とびきりの笑顔になった。

 08年4月の校名変更後、甲子園は2戦2敗。「気分一新で臨もう」(原田英彦監督=52)と今夏、つばにラインを入れた新しい帽子を採用。一時は4点差の劣勢をはね返し、夏は9年ぶりの校歌を歌った。【堀まどか】