<全国高校野球選手権:東海大甲府3-0成立学園>◇12日◇1回戦

 東海大甲府(山梨)の神原(かんばら)友投手(3年)がこの日の勝負球に選んだのは直球だった。「初球の真っすぐは振るチーム」というデータがあったにもかかわらず。「簡単に三振は取れない。どう早いカウントで打たせるか考えた」。見逃される変化球より力勝負。自己最速にあと1キロと迫る146キロは、今大会最速だ。4安打完封。狙われても押し切れる球威があった。

 直球待ちの打者がつい手を出すと、手元で伸びて詰まる。球は高かったが、狙い通り早打ちを誘発して無四球とした。わずか88球。試合時間は最短記録まであと4分という、たったの1時間16分だった。「もう1試合いけます」と笑う神原に疲労は見えない。

 球威は名物の冬季練習で培った。白米1回2キロを朝昼晩食べる。学校から観光地「昇仙峡」まで片道16キロ、多い日は1日37キロを走った。ウエートも行い、神原の球速は昨秋の140キロから7キロ増。体重は入学時の66キロから88キロに。初めてつかんだ夏の背番号1に「完投で期待に応えたかった」と成果を出し切った。

 前日には、昨年の主軸・中日高橋周が山梨で2号ソロを放った。甲子園出場決定時に祝福メールをもらった。「高いレベルで活躍する姿が励みになりました」。完封のニュースは先輩の耳にも届いたはずだ。【鎌田良美】