<全国高校野球選手権:東海大甲府4-2龍谷大平安>◇17日◇2回戦

 打者にもスーパー2年生が現れた。東海大甲府(山梨)の1番渡辺諒内野手(2年)が、本塁打、二塁打を含む3安打を放ち、打線をけん引した。村中秀人監督(53)が「高橋周平(中日)より全然上」と身体能力を評価する逸材。1年夏に2学年上の高橋を差し置いて4番に座った好打者が、バットを受け継いだ先輩よりも先に甲子園でアーチをかけた。

 7回2死走者なし、3ボール1ストライク。俊足の東海大甲府・渡辺は確信した。「出塁させたくないなら、次は絶対真っすぐだ」。読み通り、ど真ん中の135キロを豪快に引っ張る。高校通算15号となる打球は、左翼スタンド中段まで飛んだ。

 名刺代わりの1発だ。入部当初から、村中監督が「うちのスーパースター」とほれ込んだ右の好打者。昨夏の山梨大会は1年ながら4番に抜てきされた。しかも当時3年だった中日ドラフト1位、高橋周を押しのけて。秋以降は遊撃も高橋から引き継いだ。右打ち、左打ちの違いはあれど、後継者と言っていい逸材だ。

 走攻守すべてに秀でる。同監督も「身体能力がものすごく高い。周平より全然上」と断言。中学時代はシニアで野球を続けるかたわら陸上部に所属し、100メートル走で茨城県2位。1回戦では二盗を成功させた。打力もパンチがある。同校グラウンドの右翼後方に設置してある、130メートル以上飛ばないと越えない“周平ネット”を「マシン打撃でなら越えたことあります」。ちなみに今大会、奪三振記録を塗り替えまくっている「投」のスーパー2年生、桐光学園・松井裕樹投手とは、中学時代に対戦して中前打を放っている。

 憧れはもちろん「周平さんです」。昨年は寮も同部屋で、毎日野球談議に花を咲かせた。入学直後の春季関東大会では、譲り受けたバットで公式戦1号本塁打を放った。高橋が「優勝できるように」と験を担いだ金色のバット。現物は割れてしまったが、開幕前に同じモデルを買い直した。「お前もプロに来いよ」。卒業時にくれたひと言が、日々の励みになっている。

 4打数3安打1打点2得点。1回戦で1安打だった切り込み隊長は、ちゃめっ気たっぷりに笑った。「周平さんより早く甲子園でホームランが打てて、うれしいです」。競争相手はプロの“アニキ”。上を見続ける限り、渡辺の成長は止まらない。【鎌田良美】

 ◆渡辺諒(わたなべ・りょう)1995年(平7)4月30日、茨城・土浦市生まれ。小1の時、軟式の土浦サニーズで三塁手として野球を始める。小4から硬式の竜ケ崎リトルに所属し、中2の3月に竜ケ崎シニアの遊撃手として全国選抜大会出場。土浦三中では陸上部で100メートル走で11秒4をマークし、県2位で関東大会に進出した。東海大甲府では1年春からベンチ入りし、夏は4番一塁でレギュラー。秋から遊撃で、2年春から1番。家族は両親と兄2人。178センチ、75キロ。右投げ右打ち。