<全国高校野球選手権:大阪桐蔭6-2済々黌>◇18日◇3回戦

 センバツ王者を苦しめた!

 済々黌(熊本)が大阪桐蔭(大阪)に敗れ、56年ぶりの準々決勝進出を逃した。序盤は一進一退の攻防。中盤に3本塁打などで突き放され、エース大竹耕太郎(2年)が粘りの投球で完投したが及ばなかった。

 日本最強チームにも臆することなく戦った。一塁側アルプスの声援に後押しされ、済々黌の大竹は淡々と投げ続けた。最後までマウンドを人に譲ることなく堂々と138球を投げきった。「持っている力は全部出し切りました。失投もあったけど力を出し切ったので悔いはないです」。2年生右腕の目に涙はなかった。

 大阪桐蔭はエースの藤浪を温存。序盤は互角の戦いを見せた。ところが1ー1で迎えた4回、1死から連続本塁打を浴び、その後3連打で3失点。6回には2ランを浴びてさらに2点を追加された。1試合3被弾は人生初。それでも大崩れすることはなかった。「早く切り替えないとと思って、落ち込んでいる暇はなかった」。しなやかな体から繰り出す緩急をつけた投球で6奪三振。「スローボールでタイミングを外した投球ができた」。敗戦の中にも収穫はあった。

 昨秋の県大会3回戦で九州学院に敗れてから、同校を倒して甲子園に行くことを目指し冬のトレーニングを積んできた。その九州学院を倒して甲子園出場を決め、3回戦まで勝ち上がった。涙がこぼれたのは、小学生からバッテリーを組んでいた西口の話題になったとき。「高校に入ってずっと投げてきて、もう投げられないと思うと…さびしい」。言葉がつまって、とうとう我慢していた涙があふれてきた。

 チームは持ち味の足を使った攻撃ができた。5回には犠打でチャンスを広げ、1点を返した。守備は無失策で終えた。「もともと力の差はあったけど、臆することなく自分たちの野球ができた」と池田満頼監督(39)。済々黌野球を引き継ぐ新チームは大竹が中心となる。「また甲子園に来て、今日以上の投球をしたい」。大竹の甲子園を目指した戦いがまた、始まる。【前田泰子】

 ◆大竹耕太郎(おおたけ・こうたろう)1995年(平7)6月29日、熊本市生まれ。小4で投手として野球を始める。託麻中では野球部に所属し、3年時に全国大会出場。済々黌では1年夏から背番号10でベンチ入りし、1年秋からエース。好きな投手は巨人杉内。181センチ、68キロ。左投げ左打ち。