<全国高校野球選手権:大阪桐蔭8-1天理>◇20日◇準々決勝

 大阪桐蔭が史上7校目の春夏連覇にあと2勝に迫った。エース藤浪晋太郎(3年)が4安打、13奪三振で完投。9回2死から1発を浴び甲子園初完封こそ逃したが、昨秋黒星を喫した天理(奈良)に勝った。

 こんな感性も、身につけていた。9回2死。天理・吉村に対し、藤浪はこれでもかと直球を投げ込んだ。

 前打者のとき、最速タイの153キロをマーク。「三振を狙うならカットボールでいい。でもスタンドが(直球勝負を願う)雰囲気でした」。ファウルにされた152キロに始まり、3連続ボールから145キロ、149キロを連続ファウルにされた。それでも選んだ149キロ直球は、左中間スタンドに飛び込んだ。苦笑いは一瞬。畔田をカットボールで見逃し三振に仕留め、4強を決めた。

 前半はもたついた。登板機会がなかった3回戦・済々黌(熊本)戦。試合中のブルペンで、西谷浩一監督(42)に身体の開きを指摘された。その悪癖も顔を出したが「無駄な力を抜いて」修正。5回1死一塁からと7回1死からは4者連続奪三振。速球で追い込み、カットボール、スライダーを振らせ3球三振も4個。投球数118は「覚えている限り最少」だった。

 天理が導いてくれた成長でもあった。昨秋近畿大会準々決勝。同点の7回2死から3四球と2ランを含む3安打で沈んだ。昨夏の大阪大会決勝・東大阪大柏原戦も逆転負け。「いまだにあの試合のビデオは見ていない」と言う無念の敗戦だったのに、センバツがかかった試合でまた自滅した。

 2度の屈辱から藤浪ははい上がった。ストライクを取れる変化球、制球力を習得。昨秋もスコアをつけていた倭慎太郎記録員(3年)は「以前ならボールは制球が乱れた、ただのボール。きょうは配球で次の球につながるボールを投げていました」と明かした。

 選抜大会2回戦以来の甲子園2号も打った。「詰まったけれど、浜風のおかげ」。大きなストライドでダイヤモンドを駆け抜けた。

 1月4日の始動日の誓いは「センバツに出られたなら春夏連覇と国体の3冠を取る」だった。投げるたびに成長を続け、2冠にあと2勝。夏も無敵のエースになる。【堀まどか】