<高校野球秋季岩手大会:花巻東9-1花巻南>◇30日◇花巻地区2回戦◇花巻球場

 雄星と同じDNAを持つ右腕が現れた。花巻東の新チーム初戦に、西武菊池雄星投手(21)の遠縁・菊池風雅(ふうが)投手(2年)が先発。花巻南を6回4安打1失点に抑え、逆転勝ちを呼び込んだ。学校の寮では160キロ右腕の大谷翔平投手(3年)と同部屋。偉大なる先輩たちの意志を受け継ぎ、来春のセンバツ出場を目指す。

 大谷なき花巻東のマウンドには雄星の遠縁・菊池が登った。新チームの初陣で自身も公式戦初登板。「球場に来てビックリした」という母淑(しゅく)さん(39)の心配をよそに、涼しい表情で6回を4安打1失点の快投。「コントロールがよかった。緊張もしなかった」と汗をぬぐった。佐々木洋監督(37)も「全体的にはトンネルとかも出たけど菊池はいい投球をした」と背番号9をたたえた。

 先輩の怪物2人と同じく驚異的な柔軟性を持つ。ノーワインドアップから振り切った右腕は左肩付近に到達。雄星、大谷をほうふつさせる。「意識はしていない」。本人は気にも留めないが「雄星の親戚」「大谷と同部屋」というだけで納得の才能。しなやかな体は大谷とのストレッチで作り上げた。

 寝食をともにした大谷に投球術を学んだ。しかしこの日は4回表2死一、二塁から三塁線を破られ、先制点を献上。「(大谷)翔平さんはランナーがいる場面でギアを上げて抑えていた」。ピンチで最大の力を発揮し、相手打者をねじ伏せる先輩をスタンドから見てきた。自身が登板した練習試合後には、場面ごとにアドバイスを受けた。「先に点を取られたし今日は50点」。今後の課題が見えた。

 1度しか会ったことのない雄星に魅せられ、花巻東の門をたたいた。遠縁だと聞いたのは中1の時。淑さんも「3代ぐらい前にさかのぼってやっとつながるみたい。私もその時初めて知った」と驚いたという。当時の雄星はすでに全国区。「親戚だし意識した」と進学を決意した。念願の初対面は雄星の西武入りの直前。「『ピッチャーやってます』ぐらいしか話せなかったけどオーラがあった」とあこがれを抱いた。

 この日、偉大な先輩たちに1歩近づいた。それでも「まだまだこれからです」。雄星のDNAと大谷の教えを受け継ぐ菊池の挑戦が始まった。【湯浅知彦】

 ◆菊池風雅(きくち・ふうが)1995年(平7)5月17日、岩手・一関市生まれ。小学校入学前の4年間は花巻市で過ごす。その後は一関に戻り、赤荻小3年から投手兼遊撃手として野球を始める。山目中では軟式野球部に所属。花巻東では今秋からベンチ入り。名前には「風のように速く、上品に育ってほしい」という願いが込められている。家族は両親、妹2人。176センチ、68キロ。右投げ左打ち。血液型O。