<センバツ高校野球:済美3-2高知>◇2日◇準決勝

 決勝は済美(愛媛)対浦和学院(埼玉)に決まった。済美は高知に競り勝ち、9年ぶり2度目の決勝進出を決めた。怪腕・安楽智大投手(2年)が、2被弾も6安打7奪三振で2失点完投。3日の決勝は午後0時半プレーボール予定。

 最後のヤマ場は1点リードの9回に訪れた。済美・安楽は不運な当たりで、先頭打者に三塁打を許した。無死三塁で迎えたのは、前の打席で「人生3本目」(安楽)のサク越え同点弾を打たれた和田恋。捕手の金子に「敬遠しましょうか…」と申し出た。とたんに金子から「何言うとんや!?」と頭をはたかれた。「びびらず真っすぐで押して来い」。先輩捕手は顔で笑って、目で叱ってくれた。

 心は決まった。全球直球勝負。142キロ、140キロ、144キロで1ボール2ストライクと追い込み、142キロ直球で二飛。味方の失策で1死一、三塁になっても、流れは渡さなかった。今大会最少の134球で1点差を守り抜いた。これで全4試合を完投した。全力の663球が大舞台へとつながった。「小学校からやってきて、全国大会は初。優勝してみたい」。16歳は夢見る顔で声を弾ませた。

 怪物右腕は学生としても評判がいい。パソコンを使う情報の授業もいち早く教室に着き、熱心に取り組む。学校生活の快活な受け答えが、甲子園でも言葉の力になって表れる。「自分のストレートで観客をどよめかせる。チームに流れを呼べるようなストレートを投げる」。そう言い続けて決勝へと進んできた。

 恩師・上甲正典監督(65)は「選手には1試合でも多くやらせてあげたい。相手に離されず最少失点で守りたい。最後に1点多く取って終われたらと思う。(安楽には)精神力で投げてほしい」と話した。カギを握る安楽も「甲子園の決勝は、ほぼ毎年テレビで見ていました。力と力の勝負。それが決勝」と意気込んだ。

 前回は初出場初優勝。負けたことがない春の甲子園で、再び頂点に立つか。済美の校歌には「『やれば出来る』は魔法の合いことば」というフレーズがある。「やればできるのかもしれない。それを信じて明日も戦う」。上甲監督はそう言って、笑った。

 ◆安楽智大(あんらく・ともひろ)1996年(平8)11月4日、愛媛・松山市生まれ。父の転勤で高知に引っ越し、高須小2年から軟式野球チーム「高須ザイオン」で投手として野球を始める。松山に戻り、道後小3年から「東雲イーグルス」、道後中では「松山クラブボーイズ」に所属した。済美では1年秋から背番号1。50メートル走6秒5。遠投110メートル。好きな投手は巨人沢村。187センチ、85キロ。右投げ左打ち。