<春季高校野球静岡大会:静岡4-2常葉学園橘>◇13日◇中部地区決勝◇静岡・清水庵原球場

 中部の決勝は、静岡が常葉学園橘を破り、3季連続で地区優勝した。逆転された直後の6回に6番菊池啓太郎内野手(3年)が公式戦初本塁打となる2ランを放ち再逆転。辻本宙夢(ひろむ)投手(2年)が、10安打を浴びながらも、公式戦2度目の先発で初完投した。チームは昨秋からの県内公式戦で無傷の14連勝となった。

 菊池の打球は、両翼100メートルと県内最大の清水庵原球場の外野フェンスを悠々と越えた。1点をリードされた6回、先頭打者の四球から連続三振という嫌な流れで左打席に入る。マウンドにはプロ注目左腕の常葉橘・高橋遥人投手(3年)。「長打は狙わず、ストライクを全部振ろうと思っていた」。初球のスライダーを振り抜き、右翼スタンドへ運んだ。高校通算5号となる公式戦初本塁打で逆転勝利に貢献。「高橋から打ってうれしい」と、記念球を手に笑顔を見せた。

 悔しさをぶつけた一打だった。184センチ、79キロの体に50メートル5秒8の俊足を兼ね備える。三塁手としても安定した守備を見せる。プロのスカウトの間でも話題に上がる中で、打撃の物足りなさが目立っていた。練習試合から1番で起用され「1番にプライドを持ってやっていこう」と臨んだ今大会。それでも、準決勝まで2安打で、ともにセーフティーバントだった。6番に下がって2試合目でようやく快音を響かせた。もっとも、それ以外の3打席はすべて三振。「ここまで三振が多くて、しないようにと意識しすぎた」と反省も忘れない。栗林俊輔監督(40)は「まだ春ですから」とフォローし、成長を期待した。

 競争が続くチームは隙のない野球を展開した。5回には相手のミスを突き先制。7回には1番岸山智大内野手(2年)の2盗塁にスクイズで加点した。わずか4安打ながら大技と小技を絡め、現チームの県内公式戦連勝は14に伸びた。

 それでも、この春のセンバツに出場したのは秋の県決勝で負かした常葉学園菊川という現実がある。秋の東海大会では3年連続初戦で1点差負け。菊池は「県外で勝つためにやっているので、県内ではどこにも負けない」と、3季連続の県大会(27日開幕)優勝も宣言した。その先の東海大会、そして夏の甲子園へ。唯一の敗戦を糧に、白星を積み上げていく。【石原正二郎】