<高校野球春季東北大会:能代松陽7-1盛岡四>◇7日◇2回戦◇山形・天童市SC野球場

 大型秘密兵器がベールを脱いだ。能代松陽(秋田)が盛岡四(岩手)に勝利。公式戦初先発の伊藤塁(3年)が4回2安打無失点と好投した。エース芳屋快(2年)のケガで、大会直前に「背番号1」をもらった身長190センチのサイド右腕。新校名で初の甲子園を狙う夏へ頼もしい戦力が加わった。今日8日は準々決勝4試合が行われる。

 能代松陽の大型右腕が、ついに日の目を見た。伊藤はまっさらなマウンドの感触を確かめながら、テンポよく投げた。公式戦初先発で、登板も11年秋の県大会決勝で2/3回を投げて以来。「コントロール重視で」直球にスライダーを織り交ぜ、4回を2安打無失点。盛岡四に二塁を踏ませない安定感で流れを引き寄せると、打線も4回の先制から小刻みに加点して快勝した。

 転がり込んできたチャンスをものにした。右腕エース芳屋が左足首に痛みを訴えたため、当初メンバー外だった伊藤が急きょ背番号1を背負った。「めっちゃ、うれしかった」。工藤明監督(37)は「120点の仕事をしてくれた。私が欲張った」と、予定の3イニング+1イニングの“ごほうび”を与えた。

 投手の本能とも言えるスピードへのこだわりは捨てた。1年の冬、制球力を上げるために上手投げから横手投げにフォームを変えた。だが、どうしても球速を求めたくなる。投球時に力んで頭が動き、リリースポイントがブレて制球が安定しなかった。直球の最速は135キロながら「130キロ禁止令」が出たこともある。この日は120キロ台後半を保ち、四死球はゼロ。試練を乗り越え、覚醒の時を迎えた。

 身長190センチ。バスケットボールで有名な能代の生まれだが「バスケは苦手。リバウンドが取れない」。父昇さんから授かった名前は「塁」。「野球をやらせたかったと思う」と恵まれた体格を野球にささげる。

 工藤監督は「夏までに先発でゲームをつくれる投手が欲しかった」と喜んだ。エース芳屋、安定感抜群の斉藤歩夢(3年)に伊藤が加われば-。能代松陽として初の甲子園出場にも、グッと近づく。【今井恵太】

 ◆伊藤塁(いとう・るい)1995年(平7)8月15日、秋田県能代市生まれ。小4の時、軟式の能代ビクトリースピリッツで野球を始め、能代南中では軟式野球部に所属。右投げ右打ち。190センチ、84キロ。家族は両親。血液型A。