<高校野球奈良大会:大和広陵5-3青翔>◇14日◇1回戦◇佐藤薬品スタジアム

 2年生エースが、バットで試合を決めた。プロ注目の立田将太投手を擁する大和広陵が、春夏連続甲子園に向け発進した。4番一塁で先発の立田は延長11回2死二塁で登板し、三振を奪うとその裏、自身の公式戦1号サヨナラ弾で決着をつけた。

 スタンドがどよめいた。そこまで12残塁の拙攻が生む重苦しい雰囲気を打ち破ったのは、4番立田の一振りだった。3-3で迎えた11回裏2死二塁。そこまで3打数2安打2四死球の主砲に打席が回った。「外野が前に来ているし、おっきいのを打とうかな」。1発も頭に置いて振り抜いた打球は、美しい放物線を描き、左翼スタンドに吸い込まれた。人生初のサヨナラ本塁打を「むっちゃ気持ちいいです。自分が決めにいくつもりでした」と振り返った。

 「本気で甲子園を目指している。そのために逆算している」と若井康至(やすのり)監督(52)は、3年の森田常冶(ときや)投手を先発起用。森田は3点を失った3回以降、10回まで被安打1と踏ん張り、最上級生の意地を見せた。だが11回、2死をとったあと二塁打を浴びた。ここでついに、一塁を守っていたエースがマウンドに上った。「先輩が頑張っていたので、絶対抑えたかった」。投じた4球はすべて真っすぐ。先輩の力投を無駄にはしない。その一念を込めた速球は最速141キロをマークした。終盤の大ピンチを空振り三振で切り抜け、自身のサヨナラ弾につなげた。

 立田も出場した今春選抜大会、主役は準優勝投手の済美(愛媛)・安楽智大(2年)だった。甲子園で知り合い、安楽と連絡先を交換した立田は「意識しています」ときっぱり。「今は負けていますが」と自身の立場をわきまえた上で「でもいずれ絶対見返します」と対抗心を燃やす。春先に苦しんだ腰痛も夏の大会への支障はなく、17日の次戦は若井監督も「そのつもりです」と先発を示唆。自身のバットでつくった勢いを、次は先発で引き継ぐ。

 ◆立田将太(たつた・しょうた)1996年(平8)6月4日、奈良県生まれ。河合一小1年から「河合フレンズ」で投手として野球を始め、6年時に全国優勝。河合一中では「葛城JFKボーイズ」に所属して日本一になり、16歳以下のAA世界野球選手権に日本代表で出場。大和広陵では1年秋から背番号1でベンチ入り。好きな投手は楽天田中。182センチ、82キロ。右投げ右打ち。