<高校野球長野大会:茅野1-0野沢南>◇15日◇1回戦◇諏訪湖スタジアム

 最後の打者を三振に仕留めた茅野(長野)・木島力人投手(3年)は、マウンド上で雄たけびを上げ、右拳を握りしめた。勝利の校歌は総勢10人で歌った。部員7人に助っ人3人という茅野が野沢南を下し、05年以来8年ぶりに初戦を突破した。4安打完封の殊勲者木島は「仲間がカバーしてくれて最高でした」と満面の笑みを見せた。観戦していた兄智大さん(24)に声を掛けられると感極まって涙した。

 生徒数の減少は部員数にも影響した。10人で出場した昨夏大会後、3年生5人が引退、1年生2人が自主退学し、残った部員は木島含め3人。昨秋の大会は出場できなかった。冬場の練習は、ほとんどランニングや筋力トレーニング。守備練習の際はOB、教諭に頼って人数を集めた。本田真監督(35)は「内野の守備がそろったときは、感動しました」と振り返った。

 1年生4人が入部した今春の大会は、助っ人3人を加えて出場も初戦敗退。迎えた今大会、中学は野球部の二塁手だった松尾亮太中堅手(3年)、ハンドボールに興味を持って1度は退部した福島雄矢左翼手(3年)ら3人が、1カ月前に助っ人として加入した。

 この日、2人は慣れない外野をしっかり守った。おぼつかない足取りながら打球の落下点を見極め、松尾が2度、福島が1度、飛球の捕球に成功。チーム全体で1失策と木島の初完封に貢献した。木島に誘われて参加した松尾は「あいつの喜ぶ顔が見たかった。勝って木島の涙を見て、入ってよかったと思った」と話した。

 春の大会後、連日の100本ノックで守備を鍛えた本田監督は「出場できることが奇跡。そのうえ勝ってくれるなんて。野球ができる幸せをかみしめて、次も試合をしたい」と、ナインの健闘をたたえた。【塩谷正人】

 ◆茅野市と野球

 茅野市は長野県中部にある諏訪盆地の中央に位置する。野球が盛んな地域で、長野県軟式野球連盟には一般の部14チーム、少年の部4チーム、学童の部7チームが所属している。今夏の長野県中学総体軟式野球大会では、永明中が準優勝。昨夏甲子園出場した佐久長聖の五味直也投手は永明中出身。素材のいい選手は県内強豪私立校を選択し、茅野に入学する選手はほとんどいない。バンクーバー五輪スピードスケート女子団体追い抜きの銀メダリスト小平奈緒(27)は茅野市出身。