<高校野球愛媛大会:済美7-1帝京五>◇16日◇2回戦◇坊っちゃんスタジアム

 今春センバツ準優勝右腕・安楽の剛腕は健在だ!

 済美の2年生エース・安楽智大が先発し、9回14奪三振1失点で完投勝ちした。6月に調子を落としていた右腕は、周囲の不安を吹き飛ばす自己最速の153キロをマーク。雪辱の夏へ向け、好スタートを切った。試合は快勝した。

 安楽がセンバツの屈辱を晴らす歩を進めた。

 「第1試合だしフォームのバランスを見るために(最初は)セットで投げました。修正をしてバランスが取れたので、4回からワインドアップで投げました」

 序盤はセットポジションだったが、4回からは大きく振りかぶって打者に向かった。4回、7回は3者連続三振。うなりを上げる剛球で14個の三振を奪った。復活を印象付けたのは67球目。4回の6番横幕裕貴(3年)に投じた外角低めへの4球目に最速153キロを記録。その直球で見逃し三振を奪った。

 今春のセンバツで右手首に負ったケガから復帰した後、なかなか調子が上がらない日が続いた。6月中ごろ、周囲から「態度が悪いんじゃないか」と指摘された。「センバツ準優勝投手」と注目を浴びるようになったことで、どこかに慢心が出ていた。あらためて野球に対する取り組み方を考え、笑顔を忘れていることに気がついた。この日、マウンドで笑顔を絶やさなかったのはそのためだった。

 センバツ決勝の浦和学院(埼玉)戦で6回を投げ9失点(自責点3)で敗れた。2回戦の広陵(広島)戦で最速152キロを記録した直球も、決勝では142キロ止まり。130キロを下回る時もあった。4試合で663球の熱投があったからこそ決勝まで駒を進めることができた。一方で、優勝を逃したのは投球過多だという声も上がった。それが「悔しかった」。春の反省から暑さ対策、体力強化のため、グラウンドコートを着て走り込んだ。ゴルフ場で走る済美独特の練習にも取り組んだ。「暑さ対策でジャンパーを着て、その上にグラウンドコートを着てアップしています。汗をかく量も多いですし、よりいっそう疲れるので、疲れた中でどういうピッチングをするかも練習になっています」と明かした。下半身強化が実り、この日は最後まで球威が衰えなかった。夏初戦を終えて実感した1つの成長だった。

 大量リードでも9回を1人で投げ抜き球数は141球を数えた。しかし疲れた様子は見せず、試合後は「これが日本の高校野球だということを示したい。センバツで見せた済美の野球が強いことも証明したい」と力を込めた。1年秋から1番を背負う右腕は「最後まで投げ抜くのがエース」だという信念を持っている。人一倍済美の野球を誇りに思っている。だからこそ「勝ちにこだわる」。勝って証明したい。その一方で「まだ球速は出る自信はある。次は154キロを出したい」と一投手として球速への飽くなき思いもある。

 「センバツの悔しさはこのチームでしか返せない」

 全ては春の屈辱を晴らすためだ。甲子園の舞台を目指し、成長を遂げた安楽が愛媛大会を投げ抜く。【宮崎えり子】

 ◆安楽智大(あんらく・ともひろ)1996年(平8)11月4日、愛媛・松山市生まれ。父の転勤で高知に引っ越し、高須小2年から軟式野球チーム「高須ザイオン」で投手として野球を始める。松山に戻り、道後小3年から「東雲イーグルス」、道後中では「松山クラブボーイズ」に所属した。済美では1年秋から背番号1。今春センバツでは2回戦・広陵(広島)戦で2年生の甲子園史上最速152キロを計測。187センチ、85キロ。右投げ左打ち。