<高校野球神奈川大会:横浜6-0小田原>◇17日◇3回戦◇平塚

 横浜(神奈川)の名将・渡辺元智監督(68)の孫、渡辺佳明一塁手(2年)がその教えを守る好打でチームをけん引した。小田原との3回戦に5番打者で登場して3安打2打点。「逆方向を狙え」という同監督の指示通りを実践して大暴れした。

 横浜の5番に入る渡辺の安打は、すべて中から左で弾んだ。左打ち打者には、逆方向となる3本だった。7回2死二塁。速球を中前にはじき返した。ダメ押しとなる4点目の走者を迎え入れた。渡辺は「前の打席でまっすぐに三振したんで狙っていました」。この一打を渡辺監督が評価した。「4点目が大きかった。あれで楽になりました」。

 監督の指示を守った3安打だった。この日の平塚は中堅から本塁方向に強風が吹いた。「打球が押し戻されていた。それで反対方向に打ちなさいと」(渡辺監督)。1本目は2回、左前に落とした。チーム初安打だった。逆方向狙いのお手本になる一打。5回、3点をあげた1番からの3連打はすべて逆方向だった。

 9回、左中間に二塁打して5点目とすると、直後にベンチに退いた。ベストの状態ではなかった。大会前に痛めた左足甲の痛みが消えない。昨冬前、疲労骨折した右肘にも不安を抱えている。14日の初戦(対藤沢清流)では痛み止めを飲んでいた。「あんまり効かなくて。でも大丈夫です」。試合後は患部をアイシングして引き揚げた。

 渡辺監督の「苦労させないと」の方針もあり、推薦入試ではなく塾に通い、筆記試験を受けて入学した。「他のユニホームを着るより、横浜のを着たら着心地がいいだろうなと思って。あとは格好いいので。できれば監督を甲子園に連れて行きたい」。そんな思いでくぐった強豪の門だった。

 その渡辺監督から、先発に8人の2年生が並ぶチームにこんなゲキが飛んだ。「2年生も、最後の夏のつもりでやれ」。渡辺は「ハイ、自分たちが3年生を甲子園に連れて行くつもりでいます」。尊敬する祖父、そして先輩とともに晴れ舞台を踏むつもりでいる。【米谷輝昭】

 ◆渡辺佳明(わたなべ・よしあき)1997年(平9)1月8日生まれ。神奈川出身。小2で野球を始め、並木ジャイアンツでは内野手。中学では中本牧シニアに所属し二塁手。母元美さん(42)は横浜高で寮母を務める。好きな打者はブルワーズ青木宣親。好きな音楽は清水翔太の「HOME」。176センチ、68キロ。右投げ左打ち。A型。