<高校野球山梨大会:東海大甲府7-6甲府商>20日◇3回戦◇小瀬

 投げてもすごかった!

 今秋ドラフト1位候補、東海大甲府(山梨)の渡辺諒内野手(3年)が“二刀流”でチームをベスト8に導いた。6球団11人のスカウトが見守る中、打っては高校通算38号2ラン、投げては8回から公式戦初登板し、最速146キロをマークした。超高校級パワーで、意表を突かれたスタンドを魅了した。

 145キロ直球がバットにかすりもせず、ミットに収まった。9回裏2死満塁。マウンド上の渡辺は、甲府商の最後の打者を三振に仕留めると、思わず右拳を握った。「ああいう形になったけど勝てて良かった」。公式戦初登板で2回を4安打2失点、2奪三振に抑えた。

 「ピッチャー渡辺」。8回、小瀬球場に流れたアナウンスにスタンドがどよめいた。村中秀人監督(54)は試合後、「当初は1イニングの予定だった。渡辺で負けたらしょうがない」と起用理由を明かした。

 度肝を抜く“二刀流プラン”は秘密裏に進めていた。2年連続の甲子園を狙うには投手力不足と判断し、中学時代に数試合の登板経験があった渡辺を秘密兵器に指名した。「甲子園に行きたかったら、泥臭く投手もやれ」と、6月から投球練習を課し、大会前の練習試合で3イニングの実戦経験を積ませた。

 もともと内野手からの急造だが、見せ場はつくった。「ちょっとだけ意識した」という球速は、9回最後の打者の2球目に、山梨大会で今夏最速となる146キロを計測した。「8回表から肩を作り始めた。任された以上は投げるしかない」と、身体能力の高さを見せつけた。

 本職の打撃でもプロ垂ぜんのパワーを発揮した。2-0の5回2死三塁。6球団11人のスカウトが見守る前で、真ん中カーブを引っ張り、2点本塁打とした。「1打席目に右打ちを意識しすぎた。コーチから単純に引っ張れと言われて修正した。下半身を強化していたので粘れた」と、課題の変化球に対応した。

 主将で4番で抑え投手。重責を一手に引き受ける渡辺は「しっかり走者をかえすという気持ちが本塁打につながった。投球でも負けたくない」と言い切った。夢の二刀流で、2年連続甲子園への道を切り開く。【高橋洋平】

 ◆渡辺諒(わたなべ・りょう)1995年(平7)4月30日生まれ。茨城・土浦市出身。小学1年から野球を始め、中学2年春に竜ケ崎シニアの遊撃手として全国選抜大会出場。土浦三中では陸上部で100メートル走11秒4をマーク、県大会2位で関東大会出場。中日高橋周に憧れ東海大甲府へ進学。好きな食べ物はすし、好きな音楽はGReeeeN。家族は両親と兄2人。178センチ、80キロ。右投げ右打ち。