<高校野球神奈川大会:桐光学園11-1横浜商大高>◇22日◇5回戦◇保土ケ谷・神奈川新聞スタジアム

 怪物が打って、投げて、神奈川大会準々決勝に進出した。桐光学園・松井裕樹投手(3年)が、横浜商大高との5回戦に先発し、5回コールド勝ちした。初戦の2回戦(14日、相洋戦)以来の登板で5回4安打1失点。最速は145キロ、奪三振4の省エネ投球だった。5番打者としては、1点先制された直後の3回に逆転の2点適時二塁打を放つなど2二塁打。2年連続の夏の甲子園へ、投打で引っ張った。

 松井がバットで流れを変えた。0-1の3回1死満塁。豪快な空振りをした直後の3球目、カウント1ボール1ストライクから外角高めに入ってきた直球を見逃さなかった。力強く振り抜くと、打球は左中間を切り裂いた。逆転の2点適時二塁打。二塁塁上で白い歯をのぞかせ、左手でガッツポーズを2度繰り返した。

 失点直後の嫌な流れを自ら断ち切った。3回表1死一塁。右前に安打されると、右翼から三塁への送球がそれて先制点を許した。「自分の(三塁)カバーが甘かった」と反省した直後の逆転打。「来た球を思いっきり打ったらヒットになった。流れをすぐに返せて良かった」と笑顔で振り返った。

 2回の初打席では中越えの二塁打を放った松井の長打力はチームで1、2位を争う。昨夏の甲子園で1試合22奪三振の大会記録を樹立した今治西戦でも、右翼へ3ランを放った。

 今季、松井を5番で起用する野呂雅之監督(52)は「松井は三振かホームランでいい」と、バントなどの小技はさせない。「松井は全てにおいて自信があるから、何かやってくれそうな雰囲気がある。ああいう存在がいると打線に厚みが出る」と言う。鋭いスイングで相手に「怖さ」を植え付けたいという監督の狙いに、松井も「全力で振ります」とフルスイングを心がけている。

 打席ではフルスイングでも、この日の投球は打たせて取る“省エネ投法”だった。小さい変化のスライダーでゴロを量産し、5回を64球で切り抜けた。全15アウト中、ゴロアウトは7つ。代名詞の三振は4つだった。野呂監督は「意図的にバットに当てさせている感じがした。去年はコールド(試合)でもワンバウンドが多く100球を超えていたのに」と左腕の進化を評価した。

 神奈川大会に入って睡眠時間を2時間増やして8時間睡眠を心がけるなど、疲労回復に気を配っている。24日の次戦の準々決勝は横浜との対戦だ。「ここまでみんながつないでくれたバトン。ここから運命が決まる1週間。全て自分が投げ抜くつもりで行く」。2戦で14イニングを投げて188球。心身ともに充実している左腕は「あと3つ、しっかり取りたい」と頂点を見据えた。【島根純】

 ◆松井の打撃

 高校通算の本塁打数は8本。昨夏の甲子園では初戦の今治西戦で公式戦初の右越え3ランを放つなど大舞台に強い。6月9日に行われた早実(西東京)との練習試合では93メートルの右翼フェンスを越える1発を放った。先発登板の6番に入ることが多かったが、6月23日の関東第一(東東京)との練習試合から5番。今大会に入って6打数3安打2打点と、5番の役割を果たしている。