<高校野球広島大会:新庄7-2如水館>◇27日◇準決勝◇しまなみ球場

 新庄の田口麗斗(かずと)投手(3年)は、如水館打線に9安打を浴びながら2失点、11奪三振で完投勝利。今日28日の決勝で新庄が勝てば夏の甲子園初出場が決定する。

 甲子園に王手をかけた。田口は最後の打者を、併殺打に打ち取るとほえた。調子は決してよくはなかった。4回には1死から寄能(きのう)圭介外野手(3年)にバックスクリーンへ、公式戦2本目となる本塁打を許す。そこから、ギアを入れ直すと、最速144キロの直球とスライダーを武器に11奪三振。2回以外は走者を許す苦しい投球ながら、2失点に抑え完投勝利を飾った。左腕への注目度は日に日に増し、国内4球団に加えて米大リーグのブレーブスのスカウトも熱視線を送る中だったが、しっかり結果を残した。

 「去年は準決勝で負けたので、壁を越える意識はありました。(如水館は)2つ上の先輩がやられて、1つ借りを返せた」

 因縁の相手だった。「ときどきピンチになると、あの場面がフラッシュバックするんです」。1年夏の県大会決勝のことだ。そのときの相手も、如水館だった。2番手で登板したが、8回2死満塁から4番金尾にダメ押しの左前2点適時打を許した。「外そうと思ったボールが甘くなった」。1球の怖さを知った左腕は、再び決勝の舞台に戻ってきた。

 25日の練習中に“悲報”が耳に入った。桐光学園・松井裕樹投手(3年)が、横浜に敗れた事実を知った。「練習前は負けているとは聞いていたけど、マジかって感じで、残念でした」。登板翌日でノースロー調整だった左腕は、ライバルの敗戦にショックを受けながら、黙々と走り込んだ。

 面識はないが、かつてニアミスしていた。小学6年の冬に、札幌ドームで行われたNPB12球団ジュニアトーナメントに、広島ジュニアで出場。このとき、松井も横浜(現DeNA)ジュニアで出場していた。

 「今度は僕が見せる番ですね。甲子園で松井君みたいに、輝ければいいです」

 瀬戸内には秋、春と県大会で敗れているが、夏の大会では2年連続で勝利している。雌雄を決するには、最高の舞台が用意された。【鎌田真一郎】